東京電力のホームページから。「Ponta」や「Tポイント」が貯まるサービスを予告している

だが、この点でも東京電力はすでに手を打ち始めている。リクルートおよびロイヤリティマーケティングと業務提携し、ウェブサービスやポイントサービスと連動させる方向を模索。また、ソフトバンクとの提携では、電力と通信、インターネットサービスを組み合わせた共同商品販売および新サービスの開発に着手していることを明らかにしている。さらに、カルチュア・コンビニエンス・クラブとは、ポイントサービスに関しての業務提携も発表。複数の企業との提携によって、セットメニューを用意する考えだ。

実は海外では、セットメニューを強化するために、電力会社が自動車関連サービス企業、通信関連サービス企業を買収するといった異業種買収の動きも出始めているという。電力小売全面自由化の動きが、異業種を巻き込んだ再編劇へとつながっているわけで、今後、日本でも同様の動きがみられるかが注目されよう。

“攻め”のよりどころとなる3つの要素

東京電力の戦いどころは、セットメニューだけではない。むしろ、それは各社横並びの状況になり“守る”という点では力不足だ。

だが、東京電力に一方的に“守る”戦略で終わるつもりはないようだ。というのも、東京電力には“攻め”の要素がないわけではないからだ。そうした観点でみると、東京電力には3つのビジネスチャンスがあるといっていい。

1つは、これまでの電力事業ノウハウを生かした省エネ化の提案だ。

東京電力の執行役員 カスタマーサービス・カンパニー バイスブレジデントの佐藤梨江子氏は「電力小売全面自由化後には、まずは料金面に注目が集まることは確か」としながらも、「だが早晩、中身の議論になってくるはずだ」と予測する。

「電気は、色も形も味もない。また、電気を使うことそのものに喜びや価値はない。本質的には、電気を使うことで電気製品が稼働し、それによって喜びを感じたり、生活を豊かにすることが目的となる。そこにフォーカスする必要がある。そうした点からも、料金だけが取りざたされる状況には忸怩たるものがある」と語る。

東京電力 カスタマーサービス・カンパニー 経営企画室の眞田秀雄室長も、「使う電気量全体を引き下げることで、トータルとして料金が安くなるという提案こそが、利用者にとっても社会全体にとっても意義がある。単なる料金引き下げやセットメニューの提案ではなく、エネルギーコスト全体を引き下げる提案で差別化したい」と語る。

東京電力がサービス提供する「でんき家計簿」

ここで東京電力の切り札となるのがスマートメーターだ。東京電力ではスマートメーターの設置を加速しており、これを活用することでIoTと連動。細かいエネルギー制御により、省エネ提案などの差別化へとつなげる考えだ。

「従来は電気メーターのところにまで電気を届けて終わりだったが、今後は電気をどう使うのかといったところにまで踏み込んで利便性や安心・安全を届け、付加価値提案を行える『みらい型インフラ企業』を目指す」(東京電力の眞田室長)とする。

東京電力では、2014年4月からスマートメーターの設置を開始。2015年9月末時点で、285万台のスマートメーターを設置しているという。2016年からは年間570万台規模で設置を加速する計画だ。

また、スマートメーカーで計測した30分ごとの電気の使用量を、同社が提供する「でんき家計簿」で見える化するなどのサービスも開始する予定。これにより、料金プランの最適化提案も行うことができるようになるという。