アイドル好きが活きた新入社員時代
塚岡:ま、そんなこんながあって(笑)、社会人になられたわけですが。最初はクラウドファンディング(ウェブを通じて支援者を募ってプロジェクト資金を集める仕組み)の会社ですね。アイドルを応援するプロジェクトが多いクラウドファンディングだなという印象を持っています。
Eさん:おかげさまで、そういう印象を持って頂いてる方も多いんですが、僕が入った当初はアイドルの案件はほとんどなかったんですよ。
塚岡:そうなんですか?
Eさん:サービス開始当初は、ミュージシャンやアーティストの方に利用していただくことの多いサービスだったんですが、2012年ごろから変わりましたね。
塚岡:2012年になにが……。
Eさん:TIF(東京アイドルフェスティバル)ですね。当時はアイドルブームが一番燃え上がっていた頃で、一応知ってはおかないとねという気持ちだった社長を連れて一緒に行きました。そこで、市場調査のつもりだった社長がスパガ(SUPER GiRLS)にハマったんですよ。僕が休憩から戻ってきたら、スパガのステージを呆然と見つめてたんです。
塚岡:それがきっかけで社長がアイドル好きに。
Eさん:で、もうハマっちゃんだから仕事にしようと。アイドルの皆さんを盛り上げていこうということになって、会社の舵がすこし変わったんですよね。結果としては会社全体の売上も大きく上がって大成功でした。
塚岡:それ、2012年にEさんが社長をTIFに連れて行ったからですよね? すごい! 仕事とオタ活を両立したどころか、いっそ仕事にしてしまって、会社の売上に貢献したことになりますね。公私混同の働き方が、本当にいいかたちで結実した感じがします。
アイドルを応援するってどういうこと?
塚岡:YMT56の活動、そして仕事としてアイドルに関わっていく経験を通じて、現場での応援の仕方にも変化ありました?
Eさん:それまでは、どんな手を使っても前に行って、アイドルがステージを去るとき「行かないでー!」とか叫んだりするような、わりとがっついた応援の仕方だったんですが。
塚岡:まあ、伝統芸能というかお約束というか……やりますよね、それ。
Eさん:ええ、でも、YMT56の活動で声援は届くぞってことが分かったのもあって、そこまで自分を主張して応援することはなくなりましたね。
塚岡:「金沢ショック」のトラウマから、一人に固執しないで応援するようになったということもあるんでしょうか。
Eさん:それもあると思います。そのグループがもっと続くように、また舞台に上がってくれるように、応援しに行く感じです。CDだけじゃない「体験」みたいなものにもお金を払って応援したいですね。
塚岡:物販でその日のタオルを買って、とか?
Eさん:小さな箱ならチェキとかもありますけど、とにかく、お金を払ってライブに行くだけで応援できるんだってことですよね。アイドルの現場って楽しいじゃないですか。
塚岡:楽しいですね。曲によって独特の決まりがあったり、サイリウムの使い方に人によって工夫があったり。オタ服も自作してたり。
Eさん:そういう、大人が本気ではしゃげる場だという気がしてます。今はYouTubeでもアイドルのPVが見れますし、無銭(インストアなど無料のイベント)もある。でも、そこで留まっちゃいけないんじゃないかと思ってます。無料のもので気持ちを高めておいて、ライブ会場で一気にお金も気持ちも放出する!
塚岡:なるほど、いや、超わかりますよ。僕、人がたくさん集まる場所も音の大きい場所も好きじゃないですけど、アイドルのライブ会場ならめちゃくちゃ楽しめますもん。
Eさん:その体験にお金を払うわけですよね。それ自体が応援になってるんだということが分かったのは、YMT56のおかげです。