最後に強化された日本語環境について見てみよう。OS X El Capitanでは、新たに4種類の日本語フォントが登場した。新規で追加された「クレー」は硬筆体と呼ばれるペンや鉛筆で書いたような手描きの風合いがある書体で、「筑紫A丸ゴシック」は、柔らかくモダンなタッチの書体である。「筑紫A丸ゴシック」は、漢字については「筑紫A丸ゴシック」と共通で、かなやアルファベットに特徴を持たせた書体だ。「游明朝体+36ポかな」は、大正時代に制作された見出し向けの36ポイントの金属活字をベースにデザインを起こしている。游明朝体の漢字と組み合わせたかな書体で、毛筆のようなテイストが特徴となっている。4つとも個性のある書体だが、それだけでなく、OS X El Capitanでは「ヒラギノ角ゴシック」のウエイト(文字の太さ)のバリエーションを大幅に拡張し、10タイプの太さから選択できるようになっている。一番細い「W0」は市販のフォントでもかなり細い部類に入り、とても繊細な印象を受ける。太い方の「W8」「W9」はiMovieで作った映像にテロップを入れる時に良いのではないだろうか。映像に埋め込む文字は太めの方が読みやすい。多くのデバイスがRetinaディスプレイを搭載する中で、こういうさりげないアップデートはユーザーエクスペリエンスの向上という意味では重要な意味を持つ。文字が見やすくなるというだけで、作業はとても効率的になる。

「クレー」「筑紫A丸ゴシック」「筑紫A丸ゴシック」「游明朝体+36ポかな」の4書体が追加

「ヒラギノ角ゴシック」は10タイプの太さから選択できるように

そしてもう一つ、今回のアップデートのハイライトだと断言できる日本語のライブ変換機能だ。ひらがなでテキストを入力していくと、次々に変換が自動的に行われる。漢字に変換するのに、一語ずつスペースキーを押さなくても良くなったのだ。タイピングが早い人にはもちろん、筆者のように異様に長いセンテンスを用いた文体を身上としている人にとっては、非常にうれしい機能であるように思われるのであるが、それはなぜかというと、変換のためにスペースキーを押すのを、ある意味、強要されていたおかげで、思考を中断させられるのを余儀なくされることがあったのに、タイピングを延々と続けても文脈に応じた適切な変換を行ってくれるため、以前なら間違って変換されるたびに、えーっとなんだっけ?と正しい語を探さなければなかったのを、いちいちせずに済むようになり、かようなテキストも一気に書き上げることができるようになるからで、実際、この一文も、ライブ変換機能を用いて認めている。ユーザーにとっての生産性の向上という点では大きなアドバンテージとなるのが、このライブ変換機能だ。

ライブ変換機能を使って書いたテキスト。「残業代も氏はら」と不適切な変換候補が表示されているが、この後「しはらいません」と続けると、文脈を判断して「残業代も支払いません」と適切な変換が行われる