勇猛果敢にワニ(ニセモノ)に飛び掛り、(足のつく)岩場でスタッフを必死に助ける熱血俳優・杉崎正雄 (C)2015「探検隊の栄光」製作委員会

――今回の映画は、テレビ本編の合間にスタッフの裏側やメイキングを挟んでいる構成です。テレビ本編のみを地上波で流したら、世間はどのような反応だと思いますか。

どうなんでしょう、でもバレバレだと思いますよ(笑)。

――最近は出来上がった作品がネットですぐに批判されたり、マイナス査定的な見方で「炎上」として盛り上がってしまうことも多いですよね。もちろん、その逆もありますが、仮に今回のテレビ本編部分が地上波で放送されたとしたら、やっぱり「ヤラセ」という声は聞こえてきそうですね。

こんなに堂々とヤラセをやっているのは現代で有り得ないことなので、最初は『探検隊シリーズ』に合わせて80年代をイメージしていたんです。今よりも、"夢"とかをもっと身近に感じていた時代。でも、そういうことを大事に考えていたら、「昔はよかったね」みたいな話に見えてきてしまって。この作品は、「昔は良かったけど、今は良くない」とか懐古主義的なメッセージを伝えたいわけではないので、時代を感じさせるようなところは曖昧にしています。でも、おっしゃりたいことはすごくよく分かりますよ。昔は観てる側と作ってる側の間に信頼関係があったというか、おおらかな部分があったと思います。

――そうですね。表現上の自主規制も増えていますが、映画界でその傾向はありますか。

どうですかね。大きな作品になると、スポンサーさんのことも考えないといけません。テレビでは強盗犯でも逃亡する時にシートベルトをしないといけないですし、CMの事情で映せないものがあったり。昔よりそのあたりのチェックは細かくなっていると思います。

――作り手としてそのような規制は障害となるものですか。それとも、決められたことの中でものづくりをする方にやりがいを感じますか。

どちらかというと"ブレーキ"になるもの。でも、そこを嘆いていてもしょうがないですから、「楽しんじゃおう!」という感じです。今回の丸大食品さんとのタイアップでは、それは規制でも何でもないんですけど、丸大食品プレゼンツの『探検サバイバル』にした方がいいんじゃないかと思って、わざとウインナーを食べているシーンをアップでも撮りました。パリッと音も出しましたしね(笑)。堂々と楽しんじゃおうと。

――そのシーンは私もそう受け止めました。ウインナー食べたくなりましたよ(笑)。

おー! よかったよかった(笑)。

――表現の規制でいつも話題になるのが喫煙シーンです。

あまり気にしませんが、観ている人の不快になるのであればそんなものはいらないと思います。ただ、そこに喫煙シーンを入れる意味はその演出家さんにとっては必ず意味があるんだと思います。

――そのようなところも含めて、映像を撮る上で必ず心がけていることはありますか。

ハッピーエンドの映画しか撮りたくないんですよね。苦いのが嫌なんです。最終的にどんな映画であれ、構成であれ、エンドロールが終わって映画館を出る時に「あー! 楽しかった!」という気分を与えられるような映画を撮り続けられたらいいなと思います。

――それは過去に観た映画のトラウマ?

そうですね、なんでこんな映画を観せてくれたんだ! と思うこともありましたし(笑)。ただ、傷口をえぐられるような結末を好む方もいますからね。でも、僕は嫌です。そんなものにお金を払いたくない(笑)。

今回の映画は自分の人生観を表しているようなものではありませんが、撮影クルーはお客さんに伝えることだけを考えて現場にいます。僕は、そのことの"滑稽さ"と"美しさ"をずっと感じてきましたから、この世界に居続けたいんだと思います。諦めようとしたスタッフを、藤原さんが「こんなんで終わっちゃうんですか! 撮り切りましょうよ!」と鼓舞するシーンが映画にありますが、撮影していてウルッとしてしまいました。現実と重なって、 スタッフもグッときたと思います。みんな毎日泥だらけになってやってたからなぁ(笑)。

自分がそういう気持ちでやってきたという気持ちもあるし、どんな困難にも前に進もうとする美学というか。あまり小難しくはしたくはないんですけど(笑)、こいつらバカだなとか、なんかいいなとか、温かい気持ちになってもらえればいいなと思います。

――それでは最後に。監督はこれからどんな作品を作っていきたいですか。

舞台をやりたくて、その準備を進めているんですけど「笑って泣いて」のような今回と似たような世界感になりそうです(10月4日に上演を終えた舞台『In the Sky with☆ダイアモンド』)。全く規制がなくて、自分が好き勝手できることをやろうと思って本を書き出しました。この先もきっと原作ものをたくさんやるんでしょうけど、ハッピーエンドにこだわり続けられたら嬉しいですね。甘っちょろいと言われようが、日常の温かい部分や忘れていることを上手に描けるような作家になりたい。

舞台をやっても、映画をやっても「ラブ&ピース」が根底で繋がっていて、そういうことしかできないんだとあらためて思いました。舞台は何でもできるので、「映画化したら300億ぐらいかかるものを作ってやろう」と意気込んでいましたが、いざ書いてみたらすっごい庶民の話(笑)。所詮、俺はこの程度…ハリウッドには行けない男なんです(笑)。

■プロフィール
山本透(やまもと・とおる)
1969年、東京都生まれ。2005年に映画『幸せになろうよ』で監督デビュー。主な監督作に『キズモモ。』(08年)、『グッモーエビアン!』(12年)、『YOSHIICINEMAS』(13年)など。『猫なんかよんでもこない。』が来年1月30日に公開。