販売好調を鵜呑みにできない理由その1
1つはシンプルな理由で、昨年2014年は日本を含む10カ国(プエルトリコ含む)で9月19日にiPhone 6/6 Plusが発売されたにもかかわらず、現在iPhone市場としては世界2位の中国では10月17日まで発売されておらず、先ほどの1000万台という数字に中国は含まれていない。だが今年2015年は、昨年の10カ国に中国とニュージーランドを加えた12カ国まで増加しており、昨年水準を上回るのは規定路線とみられているからだ。
実際、CNBCが紹介している各国やキャリアごとのプリオーダー状況を調査したデータによれば、プリオーダー開始翌日の12日時点で中国のみすべてのモデルで納期が2~3週間または3~4週間となっており、(Appleが中国向けの台数を増やしているとみられるにもかかわらず)同国での需要が非常に高いことがうかがえる。
販売好調を鵜呑みにできない理由その2
理由の2つめは、実際の予約数に関する声明をAppleが出さなかったことだ。例えば昨年の場合、Appleは発売最初の週末の販売数以外に、予約開始後24時間での予約台数が400万台を突破したことを報告している。
Re/codeによれば、Appleが予約台数を出さなかったのは過去5年間で今回が2回目で、前回はiPhone 5S/5Cが発売された2013年だ。この年、AppleはiPhone 5Cのみ事前予約を行い、iPhone 5Sについては予約を取らなかった。iPhone 5Cの販売状況が芳しくなかったのは周知の通りで、実質的にこの年にAppleが出せるような数字はなかった。
過去のiPhone販売台数の四半期ごとの推移はStatisticなどで参照できるが、両製品が発売された商戦期のApple会計年度で2014年第1四半期(2013年10~12月)の販売台数の伸びは低く、実際7%程度の(iPhoneとしては)低水準に収まっている。だが2015年に再びこの状況が再現されたことで、Sanford BernsteinのアナリストToni Sacconaghi氏が指摘するように「予約台数が400万台を下回っている可能性」を邪推する意見さえある。
またFortuneで紹介されているように、Appleの目標株価を172ドルに設定するなど(現在は116ドル前後)、同社に関して強気な予測をつねに出し続けているPiper JaffrayのGene Munster氏でさえ、世界全体では10~20%程度の販売台数のジャンプスタートが期待できる一方で、中国を除いた地域での成長率は0~10%程度を見込んでいるなど、iPhone 6s世代での成長は年率3%程度としている。
同氏の販売台数評価は概ね良好としているが、今回の昨年水準突破の主要因が中国頼みとみられる構図は変わっていないようだ。ただ、中国市場が同社にとって非常に重要であることはAppleも認識しており、昨年大陸からの買い占めと転売で問題となった日本と中国の発売日を同日に揃えたり、Barronsもコラムで触れているように昨年発売日が1ヶ月ずれ込んだ原因となった政治的な部分をあらかじめ解決してくるなど、最大の製品を最大の市場へと持ち込むにあたって万全の準備を整えている。
ただし株式市場での反応は微妙で、同件が発表された9月14日朝に2%ほど同社株(AAPL)は上昇したものの、全体にダウ工業株30種平均(DJIA、Appleも2015年3月以降に30種の構成銘柄の1つ)の動きと連動している。Wall Street Journalもこの市場からの反応に言及しているが、ニュース自体は市場を驚かせるものではなく、むしろAppleに対して実際の数字を懸念させる材料となっていることを指摘している。