選考活動スタートの8月以降の動き
――選考活動スタートの8月1日以降はどのような動きが見られましたか?
当初は、お盆ぐらいまで段階的に選考が進むケースが多いと考えていたのですが、蓋を開けてみると8月初旬の動きで命運が別れるほどの短期決戦になったケースが少なくありませんでした。1日の午前中に一次面接、午後に二次・三次があり、その日中に内々定を出すケースもあったと報告を受けています。
そのため、2日以降に選考を予定していた企業は、他社の内々定が先に出てしまい、面接を辞退されるというケースが目立ったようです。タイミング逸して、優秀な学生を採れず、現時点で採用予定数が達成できていない企業も多くあります。
――7月までに選考活動を終えた企業は、どのように内々定者のフォローをしていたのですか?
内々定者同士の親睦を深めるための懇親会や、先輩社員との面談会などを開いたケースがあります。もちろん8月1日に内定者懇親会などを開いた企業もありましたが、かつてのようにホテルに缶詰にするなどの極端な拘束はなかったようです。
――今年は「オワハラ」なども話題になりましたが……
自社に是非入社してほしい、他社の選考を辞退してほしいと思うのは採用する側にとっては自然な思いです。ただ、内定を出すかわりに就活の終了を強要するような極端な例は、それほど多くはなかったと見ています。
仮にそんなケースがあったとしたら、SNSですぐ拡散する御時世ですから、「オワハラ」をすることは企業側にとっても非常にリスクが高いのです。また、強引に引き止めて仮に入社することになっても、結果的にすぐ退職してしまう可能性は十分に考えられます。
学生の動きはどう変わった?
――学生はどのように活動していたのでしょうか?
就活で一番リスクがあるのは、「売り手市場で先輩も大手企業の内定が出ているから、自分も大丈夫だろう」と思って大手企業しか視野に入れず活動してしまうことです。大手志望にこだわっていると大手企業の選考にもれて、8月の段階で持ち駒がなくなってしまい再度就職活動をやり直す必要に迫られます。その影響か、7月に開催した弊社の合同企業セミナーは、選考前ということもあり、来場した学生も少なめでしたが、8月では2日間で約2,000人と非常に多くの学生が参加しました。
――「サイレントお祈り」「サイレント辞退」という言葉が学生の中で話されているようですが、具体的にどのようなことでしょうか?
エントリーシートの不合格通知や選考時の不採用通知をする場合には、通常「今後のご活躍をお祈りしています」という文面が書かれているため、「お祈りメール」と学生から呼ばれています。中には不合格、不採用の「お祈りメール」すら来ないケースがあり、それは「サイレントお祈り」と呼ばれ、今年は、この「サイレントお祈り」が1つのキーワードになりました。
また、8月に選考を受けて内々定をもらった学生が、既に内々定をもらっていた企業に辞退連絡をしない「サイレント辞退」という新たな言葉も生まれました。