「おサイフケータイ ジャケット」の仕組みを活用

機能面で気になるのは、やはりFeliCaとしての利用だろう。現在のwenaは、FeliCa部分の機能に、NTTドコモの「おサイフケータイ ジャケット01」と同じソフトウエア・フレームワークが使われているという。

おサイフケータイ ジャケット01は、FeliCaとBluetoothを内蔵したカードサイズの機器。iPhoneのようにFeliCaを内蔵しないiOS機器で、FeliCa決済を実現するものだ。iD・QuickPay・ヨドバシカメラゴールドポイントカード・ANA SKiPサービスに対応しており、今後、楽天Edyへの対応を予定している。

形状こそ異なるが、wenaは同じ仕組みを使うため、これらのFeliCa対応サービスに対応する予定だ。小型かつステンレスのボディで非接触IC機能を実現するため、アンテナなどはソニーがwena向けに独自開発を行い、ソフトとサービスの部分は、フェリカネットワークスが開発しているおサイフケータイ ジャケット01のものを使っている、という形になる。

wena内にはFeliCaが内蔵されていて、決済などで利用できる

おサイフケータイ ジャケット01と同じ仕組みであるということは、現時点では、もっともニーズの大きなFeliCa系サービスである交通系決済、例えばSuicaには対応していない、ということでもある。この点は留意しておく必要がある。

ただし、スマートウォッチとしての機能がバンド側にある、というwenaの性質上、今後技術が進歩した場合にも、バンド側の変更で対応できる可能性が高い。現在は明確な予定はないということだが、FeliCaではなくNFCに対応したものや、FeliCa対応の幅をより広げたものも考えられる。「世界展開時には、マスターカードが進めている非接触決済である『PayPass』、VISAカードが進める『payWave』への対応を検討している」という。

入社2年目の新人がプロジェクトリーダー

このプロジェクトを指揮する對馬さんは入社2年目で、まだ非常に若い。元々ソニーに入社する前から、ウェアラブル機器の開発を考えており、その時に持っていたアイデアのひとつがwenaだった。

その後、研修中にアイデアを熟成させ、数人の同期とともに、ソニー社内で動き始めていた「新規事業推進プロジェクト」に応募する。この段階ではまだ当然、社会人1年生である。

「実は、もう少し簡単にできるものと思っていたんですが、とんでもない。社内のプロフェッショナルの力を借りなければ、とてもできませんした」。對馬さんはそう笑う。部材調達やマーケティング、デザインに機構設計など、プロの能力が必要な部分では、ソニー社内の人材が力を貸し、ともにプロジェクトを進めた。

wenaプロジェクトメンバー。半数がまだ「ソニー2年生」。残りはベテランがバックアップする体制だ

wenaはまだスタートしたばかりで、正式に事業化が決定しているわけではない。そもそも「First Flight」という仕組みが、クラウドファンディングによって市場性を検討し、事業化とそのスキームを決めるためのものだ。

とはいえ、半年程度でまだ経験の少ない人材が中心となってこの種のプロジェクトを立ち上げるのは大変なことだ。ソニーとしては、ベンチャーのスピード感や発想力に近いものを生かしつつ、同社が長く培ってきた製造力でカバーしてスムーズな事業化を実現しよう、という狙いがある。すでに3つの商品が同じ枠組みで世に出ているが、今後も継続して展開する予定であるという。

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