――6月に就任してから2カ月間、まず、どんなことから手をつけましたか。

大田社長はまず、営業部と量販営業課をVAIO内に新設。一気通貫の体制を構築した

いまのVAIOに最も必要なことは、「自立」させることです。具体的には、企画、設計、生産、品質保証に加えて、営業までを含めた一気通貫の体制を構築し、すべてを自らの体制のなかでやるということです。これまではソニーマーケティングが営業の領域を担っていたわけですが、今後の商品企画、商品開発を考えた場合、営業の現場に出ていくことができない体制では問題があります。

そこで、この6月に営業部を新設しました。ここには長野の設計部門、生産部門からも社員が異動し、技術営業ができる体制を作っています。私がうれしかったのは、このとき、「やりたい人は手をあげてほしい」と言ったら、かなり多くの人が手をあげてくれたことです。これは、自分が設計したり、デザインしたものが売れない理由はなんなのか、どんなものが求められているのかを知りたい、といった危機感を持っている社員が多かったことの裏返しだと思っています。

ソニーに手放された事業であるという悔しさはあるが、なにが悪いのかということはしっかりと意識している。やる気があることがわかった。ソニー時代から感じていた疑問を、直接現場で確かめてみる機会だと考えたのではないでしょうか。

――急に大きく体制を変えると、反対意見も出たのではないでしょうか。

実は、この組織を作ろうとしたときに、経営陣からは反対の声もありました。技術者には技術以外のことはやらせたくないという声です。しかし、その文化のままではいけない。そこで、営業部の設置からはじめ、それを社員自らの応募によって作り上げたわけです。

彼らは、営業部の内に設置した技術営業課に所属し、BtoB対応を行います。東京では3人体制ですが、長野には案件にあわせて技術営業を行う社員が30人ほどおり、案件ごとに柔軟な対応をする体制としています。

さらに、量販店などを担当する量販営業課も新設しました。ただ、ここでは販路をむやみに拡大することは考えていません。100店舗強にしぼって展開していくことになります。量販営業課では、店舗を直接担当するラウンダーが必要ですから、いま、新たな雇用を行っているところです。これまでは、ソニーマーケティングとの窓口はありましたが、組織として営業体制は持っていませんでした。営業部を自前で設置することで、自立するための基盤を作るというのが最初の取り組みとなります。