実はこの「バーチャル高校野球」、全国高校野球選手権大会の主催者である朝日新聞社と朝日放送がタッグを組んで提供する、れっきとした公式のポータルサイトである。

「高校野球好きの人が見たいコンテンツが全部一箇所に集まっている場」を作りたいという思いで、このサイトの事業戦略とプロデュースを請け負ったのは、企業二年目のベンチャーのリムレット。昨夏に朝日放送と立ち上げた同名のサイトが好評だったため、今年は主催者である朝日新聞社との共同事業へ"格上げ"されたという経緯がある。

この「バーチャル高校野球」、どのようなきっかけで誕生したのだろうか。

リムレット 代表取締役社長の黒飛 功二朗氏は「放送局が持つ権利を活かして新規の収益構造を作りたいという相談があり、地上波の広告ビジネスを傷つけない形でのインターネット上の同時再送信というモデルを弊社から提案しました。高校野球は好きでも業務時間中は地上波のテレビ中継を見られないビジネスマンは多い。

こうした人たちが日中はネット経由で中継や一球速報に接触し、家でテレビの前に居るときはこのサイトをセカンドスクリーンとして地上波テレビ中継をより楽しむという循環をうまく作れば、テレビとの食い合いにはならず、高校野球コンテンツへの総接触量を高めることができると考えました」と話す。

結果として「バーチャル高校野球」は大会期間の1カ月程度で1020万人のユニークユーザーを集めるなど、新たなユーザの掘り起こしに成功する一方、テレビ中継の視聴率は前年比でむしろ上昇するなど、黒飛氏が立てた仮説は証明された格好になった。

こうした昨年の実績が今年、大会主催者の朝日新聞社との共同事業化に繋がった。そして、新聞社の有する速報、ニュース記事、コラムに加え、フォトギャラリーなど写真コンテンツも充実しバージョンアップを果たしたというわけだ。

テレビ中継では常時流れない映像ソースを活用することで、独自の価値を生み出しているのが「マルチアングル機能」。動画中継のウィンドウの直下には4つのボタンがあり、通常はテレビ中継の映像がそのまま流れているが、その隣にあるボタンを押すと、カメラが「投手中心」「打者中心」「センターカメラ」の視点で切り替わる。投手や打者の視点でプレイを体感できるほか、球場全体を俯瞰しつつ、外野席に座って試合を観戦しているかのような感覚を味わえるというわけだ