自ら手繰り寄せた"園子温監督との縁"
――今年は園子温監督作に3作出演することが話題になっています。作品含めて、最初の出会いは?
AKBを辞めた直後ぐらいだったと思いますが、『自殺サークル』(2002年)がきっかけで監督の存在を知りました。それからすっかり園さんの世界にはまってしまって。もともと海外のスプラッター系の映画が好きだったのですが、日本の映画であそこまで豪快な描写を見たことがなかったので新鮮でした。「これが映画だ!すごい監督がいる!」と興奮してしまったんです。そこからずっと園さんの大ファンで。『自殺サークル』を観た時から園さんの作品に出たいとなんとなく心の中で思っていて、勝手な直感ですけど自分はいつか出られる気がすると(笑)。
その後、映画に出たいと強く思うようになった時に、自分から会いに行っちゃえと思って。すごく肉食系なんです(笑)。園さんが渋谷の小さな映画館でトークショーをやっていたので、そこに一人で行きました。ちょうどバレンタインデーの時期だったので、チョコレートにメッセージカードを添えて。
――グイグイ行きますね(笑)。
はい(笑)。甘酸っぱい青春時代を思い出すぐらいドキドキしてしまって、1回トイレに隠れたり、深呼吸したり。すごく緊張しながら、「女優をやっています。ぜひいつかよろしくお願いします」とお伝えしました。
――どんな反応でした?
「あれ?」「知ってる気がする」みないな反応でした。なんか適当なことをおっしゃっているなぁとその時は思ったのですが(笑)、後から聞いたらその3日前ぐらいにツイッターで私のページを見ていたらしくて。私が「園子温」というワードを入れてツイートしていたからだと思います。今思えば、ご自身の名前を検索していたということになりますけど(笑)。つい1年前ぐらいの出来事です。『新宿スワン』の撮影前なので、去年の2月ぐらいだったと思います。
最初の『新宿スワン』では、「演技を知らないからお手並み拝見させてもらうよ」と言われて、1~2シーン出させてもらいました。それでダメだったら女優人生が終わる可能性もあったので、とにかく全力で臨んで、言われてないこともやったり(笑)。それを気合の入ったやつと受け取ってくださって、次に『リアル鬼ごっこ』、その次に『みんな!エスパーだよ!』の話をいただきました。
"女優・冨手麻妙"のこれから…
――園監督の映画に出るという目標は達成できましたが、今後の新たな野望は?
まだまだです! 園さんの映画で主演をやらせてもらって、海外の映画祭で賞をとらないといけません! 好きな監督なので、園さんの映画で何かの賞をいただきたいです。具体的には、23歳までにベネチアで賞をとりたい。希望は園さんと一緒に作った映画。
そして、25~26歳くらいでやりたいのは、朝ドラのヒロイン。朝ドラは『花子とアン』に出させていただいて、ドラマの現場で役をいただいたのはその時が初めてでした。アイドル時代の競争のように、朝ドラの現場にも同世代の女の子がいっぱいいて、「戦いの現場」だったというか。でも、全部オールアップした後に、メイクさんが「次は朝ドラのヒロインで帰ってきてね」と温かい言葉をかけてくださいました。すごく気軽な感じで言ってくださったと思いますが、私にとってその言葉は今でも励みになっています。
――最後の質問にふさわしいかわかりませんが、お名前が印象的で。本名ですか?
本名なんです。麻妙の「麻」はとても強い生地を意味する「麻」。ぬれても破けない。小さなことでへこたれない強い子になってほしかったそうです。「妙」は奇妙、絶妙などの「ちょっと変わっている」みたいな意味があるかもしれませんが、「ほかの人よりも何か1つでも長けているものを持っていてほしい」という願いが込められているみたいです。
――今日のお話を聞く限り、お名前のとおりの人柄な気がします。
なっていればいいんですけどね(笑)。私はとても気に入っています。なかなか読めないので、マネージャーさんと話し合って、ひらがな表記にする案もありましたが、名前に込められた思いが今の仕事にとても通じるものがあったので、実名そのままにすることにしました。名前の漢字は、私にとっては人生の目標になっています。
■プロフィール
冨手麻妙(とみて・あみ)
1994年3月17日生まれ。神奈川県出身。B型。2009年にAKB48の第8期研究生オーディションに合格して芸能界デビューを果たすも、同年12月に卒業。翌年に復帰し、グラビアなどで活動しながら小劇場を中心に舞台経験を重ねた。NHK大河ドラマ『八重の桜』(13年)、NHK連続テレビ小説『花子とアン』(14年)、NHK大河ドラマ『花燃ゆ』(15年)などのドラマ、『ハダカの美奈子』(13年)、『ライブ』(14年)、『後ろ向きの青』(14年)、『新宿スワン』(15年)、『リアル鬼ごっこ』(15年)、『みんな!エスパーだよ!』(15年)などの映画に出演。