『闇金ドッグス』で地下アイドル"けろリズム"の姫野えりなを演じた冨手麻妙 (C)2015「闇金ドッグス」製作委員会

――ネットではいろいろな噂が書き込まれていますが、聞いてもいいですか?

大丈夫ですよ。なんでも聞いてください(笑)。研究生はチームに所属していない、"アイドルの卵"。そこからチームに上がれないと、辞めないといけない状況でした。私たちの次に後輩も入ってきて、結構な人数になっていました。そこで、セレクション審査をやることになり、私たちの同期は一斉に辞めることになってしまって。

特にオーディションもなくて、審査の基準となるのは普段の行いとか…。努力が足りなかったと思いますし、「厳しい世界」を痛感したのもそのことがあったからでした。解雇されずに研究生のままだったり運よくチームに上がれたりしても、たぶんその挫折がなかったら、そのままフワフワした気持ちで流されながらやって…もしかすると、芸能活動を続けていなかったかもしれません。あの経験は屈辱だったし、悔しかった。必ず違う形で勝負してやろうと心に誓いました。あの時の挫折は、私にとっての財産です。

――翌年の復帰には、そういう決意が込められていたわけですね。

そうですね、辞めてすぐに今の事務所のマネージャーさんと出会って。間を空けずに復帰しましたが、ほかの選択肢はありませんでした。自分を生かせる場所は何だろうと考えて、真っ先に浮かんだのが"女優"。もともと私はアイドルがすごく好きというわけではありませんでした。今回の映画で、ファンがえりなに「フィギュアだろ?」と問いかけるシーンがあります。アイドルは、偶像とかそういうイメージを持たれてしまう職業。向いている方もいると思いますが、そういうふうに思われるのが嫌だなと思ってしまう自分がいて。

だったら、自分の人生経験とか今までの経験を全部むき出しに出せるお芝居が向いているんじゃないかと思って。そこからは小劇場で舞台経験を重ねました。年間8本くらいやったのかな。同時進行でやることもあって、当時はがむしゃらに芝居を学びたい一心でした。やっぱり人前でやる舞台はとてもお芝居の勉強になります。セリフを覚えるのも早くなりましたし、長期間の役作りを求められる経験も今に繋がっていて。それでも全然まだまだ。それでも最近は、映画などに出させていただけるようになりました。やっとスタートラインに立てたのかなと思います。

人見知りの克服といじめとの闘い

――小学校の頃、ぜんそくの治療も兼ねてヒップホップダンスをはじめたそうですね。それで人前に出ることの快感を味わったと。

そうです。しかも人見知りで、人前に立つことがすごく苦手でした。男の子に髪を引っ張られていじめられて泣いたり、弱虫だったんですよ。それでお母さんの勧めで、「人前に立ってみたら何かが変わるかもしれない」という可能性にかけてダンスを習い始めました。強制参加の発表会があったり必ず人前に立たないといけなくて、それをやっているうちに明るい性格になっていきました。ガラッと人柄が変わっちゃったというか。むしろ人前に立ちたいと思うようになって、今はほとんど人見知りもしなくなりました。

――ブログには、いじめ体験も赤裸々に書かれていました。小学校からはじまり、中学になってもいじめは続いたそうですが、その人たちを見返したいという気持ちもありますか。

あります。すごく負けず嫌いなのかもしれません。結構頻繁にいじめられていて、なんだか理由もよくわからなかったので「もういやだ」となっちゃったことがありました(笑)。男の子からのいじめはほとんどなくて、女の子からの陰湿ないじめが多かった。それが怖くて学校に行きたくなくなった時、母に相談したら「いじめている子たちに明日から対抗できるのか、自分で決断しなさい」と言われました。それから、自分で戦いに行ったり(笑)。「自分で決断しなさい」というのは、小さい時から言われていたことでした。自分の人生を決めるのは自分。そして、自分で決めたことには責任を持ちなさいと。

――AKB48研究生のオーディションを受ける時や芸能界への復帰も?

はい。母はとても強い女性です。ちなみに、私の出演作は全部観てくれています。『リアル鬼ごっこ』は公開初日に観てくれました。出演作が増えていることをすごく喜んでくれていますけど、「まだまだだね!」と全く褒めてくれません(笑)。1つの作品として観てくれるので感想が結構細かくて、しかもひいき目じゃないんですよ。だから、一緒に観るとすごく楽しい。『闇金ドッグス』も、誰よりも早く観てほしいなと思います。