以前のレポートでも触れたが、価格帯を若干引き上げた無印の上に位置する製品を拡充する方針をAppleでは目指しているといわれており、仮にiPhoneほどの台数は出なくても、利益率でそれをカバーしたいという思惑もみられる。個々のユーザーのiPhoneの更新サイクルは現状で2年単位だが、Apple Watchはもう少し長くなると考えられるため、より利益率を重視する傾向が強くなるというのが筆者の見解だ。

Appleにとって、iPhone以外のビジネスの強化は同社の死活問題につながる重要なことだ。例えばBarronsはドイツ銀行(Deutsche Bank)のアナリストSherri Scribner氏の分析を引用して、Appleが間もなくiPhone販売で苦境を迎える可能性を指摘している。

現行のiPhone 6とiPhone 6 Plusは記録的なセールスを達成したが、これは既存市場もさることながら、中国移動通信(China Mobile)でのiPhone販売開始や中国を中心とした国々でニーズの高い「大画面端末」をラインナップに追加したことが大きい。つまり大幅な販売増の背後に中国市場での好調がある。一方で、iPhoneに代表される高級価格帯スマートフォンの市場は比率でいうと縮小を続けており、台数ベースでは現状維持または微増だとしても、すでに伸びしろはなくなっているという見方が強い。

中国市場に食い込んだiPhone。すでに伸びしろは少ない?

いまのAppleにとって必要なのは、次の会計年度以降での同社の成長を支えるエンジンだ。その1つが、今秋リリースが見込まれる新型Apple TVや関連サービス、そしてApple Watchということになる。

成長要因が中国に偏っていることは、Appleにとってリスクでもある。ここ数日、上海を含む中国の株式市場が連日の暴落に見舞われているが、もし今後同国で不況ムードが蔓延して購買意欲が削がれると、iPhoneをはじめとする高級価格帯に位置するスマートフォンの製品群は敬遠される傾向が見られるかもしれない。これは中国以外の市場にも波及する可能性があり、スマートフォンの中心価格帯がミッドレンジやローエンドへとシフトするきっかけとなる可能性がある。iPhoneの新規ユーザー獲得が難しくても、2年縛りといった販売推奨金を組み合わせた販売サイクルの中で既存ユーザーをつなぎ止め、この中で次々と新サービスや周辺機器を提案していくのがAppleにとって重要だと筆者は考えている。