3カ月で売れたApple Watchの台数は?
データ自体の信憑性も含め、Apple Insiderなどがデータに対する疑問やこれで起こる問題を提起している。Sliceは初速時点でのApple Watchの"米国"での販売台数を150万台、2カ月後の6月中旬時点での販売台数を300万台程度としているが、The Vergeによれば、KGI SecuritiesのMing-Chi Kuo氏の推測で、全世界での事前注文(Pre-Order)が230万台だとしている。同誌はSliceによる事前注文の予測値「120万台」という数字も紹介しており、これを合わせればApple Watchの販売台数のおよそ半分は米国でのものだと考えられる。
Sliceの数字では事前注文が120万台、最初のピーク(おそらく初週)での販売台数が150万台と30万台分の差があるが、これは当日販売分の誤差だと考えていいだろう。もし、6月中旬時点で米国内での販売台数が300万台程度だとすれば、全世界では単純計算で2倍の600万台の販売台数になると考えられる。
Appleの会計年度で2015年度第3四半期は4~6月の3カ月間となるため、7月21日に発表されるデータは、この推測値より半月分の販売台数(つまり25%にあたる150万台)を上乗せした水準で、これを上限とした600~750万台くらいだというのが、Kuo氏とSliceの予測を組み合わせた筆者の予想だ。
Android Wearより驚異的な販売数だが……
これは2014年におけるAndroid Wearの出荷実績である72万台を考えれば十分驚異的な数字だが、一方で前出のKuo氏は、2015年第4四半期(7~9月期)までのApple Watchの累計販売台数を「1500万台を下回る水準」としており、Sliceのデータに準拠するなら、少なくとも第3四半期(4~6月期)の販売台数と同等以上の実績を上げなければKuo氏の予測水準には届かない。
現時点でApple WatchはOSソフトウェアやハードウェアの大幅な拡張は望めず、今後少しずつ充実するアプリや関連サービスの登場に期待するのみだ。Sliceのいうように販売ペースがピーク時の1割未満に落ちているのなら、追加のテコ入れ要因なしでこの数字を達成するのはほぼ不可能に近い。プラス要因としては、予約なしにApple Storeでの店頭購入が可能になったことが挙げられるが、おそらく押し上げ効果としてはそこまで大きくないと考える。
賛否両論あるものの、Sliceが現状で出している累計販売台数は、比較的実数に近いと考えられる。ここまでの説明にもあるように、Kuo氏らアナリストの予測数値と比較したうえで、それほど大きく違いがみられないからだ。Apple Insiderなど多くのメディアや関係者が問題にしているのは、むしろ「Apple Watchの販売が落ち込んでいる」という表現や、実際に実績のほとんどないSliceが調査会社として信頼に足るのかという部分で、Sliceの分析が正しいのだとすれば、Kuo氏の「1500万台を下回る水準」というApple Watchの2015年9月まで累計販売台数見込みの達成が難しくなる。
7月21日発表の決算では「Apple Watchの(6月末までの)累計販売台数」はわかっても、「Apple Watchの販売が落ち込んでいる」かどうかは判定できず、これは次の10月後半に発表される第4四半期決算の結果を待つ必要があるだろう。つまり、Sliceが信用に足る調査会社かは、7月と10月にそれぞれ発表される2つの四半期決算報告を待って、初めて判定されるということだ。