閑話休題。X-T10の撮像素子は、APS-Cサイズ、有効画素数1,630万画素のX-Trans CMOS IIセンサー。兄貴分であるX-T1との差は、主に、防塵防滴でないこと、電子ビューファインダー(EVF)のモニターサイズと表示倍率、背面液晶モニターの画素数、連続連写枚数が挙げられる(その他、X-T10に搭載されたソフトウェア部分の新機能は、6月末のファームアップでX-T1でも使用可能になる)。このことから、ネット上では「多少無理をしてでもX-T1を選んでおくべき」という意見も少なくないようだ。
■「X-T1」と「X-T10」の主な違い | X-T1 | X-T10 |
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電子ビューファインダー(EVF)のモニターサイズ | 0.5型 | 0.39型 |
電子ビューファインダー(EVF)の表示倍率 | 0.77倍相当 | 0.62倍相当 |
背面液晶モニターの画素数(画面サイズは3型で共通) | 104万ドット | 92万ドット |
連続連写枚数 | 47枚 | 8枚 |
まず防塵防滴については、「ないと困る」人はX-T1を選ぶしかない。「いつか役に立つときがあるかも」と考える人には保険みたいなものなので、この点だけ見れば、X-T1かX-T10か選択が分かれる。
X-T10については、どんな撮影設定からでもワンアクションでアドバンストSRオートに切り替わる新装備「オートモード切換レバー」の圧倒的な利便性や、整理されて操作性が向上したダイヤル類、内蔵フラッシュ、小型軽量ボディなど、X-T1と比べてもアドバンテージが大きい。なお、アドバンストSRオートは、58のシーンからカメラが自動で最適なものを選択してくれる機能だ。
中でも、オートモード切換レバーは「待ってました!」と諸手を挙げて歓迎するに相応しい装備といえる。Xシリーズは外観のみならず、操作系もクラシカルだ。シャッター速度と露出補正は軍艦のダイヤル、絞りはレンズの絞りリングで調整する。それは、Xシリーズならではの、カメラの原点を辿るような操作の楽しさだ。
しかし、現実の撮影では、ISO感度もAFポイントも測光切り替えも操作する。結果、操作個所が分散し、とっさの状況変化に対応するのは難しい。何しろ、従来機でアドバンストSRオートにするには、シャッター速度、絞り、ISO感度をすべてオート位置にセットする必要があるのだ。他社カメラのようにモードダイヤルがあれば、即、フルオートにセットできるのに……と、何人のXユーザーが思ったか知れない。
操作の楽しさと現実的操作性の両立。この難しい問題をX-T10は、一本のレバーで見事に解決したのだ。しかも、レバーだからダイヤルを回すより早い。そして、元の設定にもワンタッチで戻せる。これなら、モードダイヤルがあるカメラより使いやすいかもしれない。
なお、EVFや背面液晶のスペック落ちについては、はっきりいって「まったく気にならない」レベル。EVFの見え方は、相変わらずクリアで自然。X-T1と同様、時折描画処理がコマ落ちしたり、蛍光灯のフリッカーを拾うが、これはEVFである以上は仕方がない部分だろう。むしろ、EVFだからこそのピント拡大機能やフィルムシミュレーションをプレビューしながらの撮影を積極的に楽しみたい。