隠していた爪を出してからが本当の評価
Apple Watchはスペックを前面に押し出さずに展開されている製品だ。例えば搭載されているCPUのクロック周波数やコア数、メモリ搭載量といった話は、アップルのウェブサイトを見ても掲載されていない。ファッション性の高いアイテムだけに、数値だけを追ったスペックよりも、実際の使用感などを見て欲しいという気持ちの表れなのだろう。確かに、実際に触ってみると「スペックはどうでもいいかな」と思わせる気持ちの良さを備えており、「百聞は一見に如かず」ならぬ「百読は一触に如かず」といった感じだ。
とはいえ、実際に触ってみる機会が取れない人にとっては、スペックも立派な評価軸の一つだ。Android Wear端末に見劣りしていた部分が、watchOSのアップデートで肩を並べるに至ったわけで、IT系メディアのライターとしてみれば、両者をようやく同じ舞台の上で公平に評価できるようになってくれた(感情を交えないで、第三者が記事だけで客観的に比較・評価できるという意味で)。正式リリースは秋まではお預けとはいえ、この点は一安心だ。
こうして並べてみると、バッテリー容量は相変わらずApple Watchのアキレス腱だが、現在の使用環境では明らかにスペックを上回る時間利用できているので、思うに、バッテリー駆動時間に関しては、最初からwatchOS 2でネイティブアプリをサードパーティに解放したり、Wi-Fiを使えるようになった状況を前提に設定していたのではないだろうか。単独で3G通信能力を持つGalaxy Gear Sは別として、Android Wearとは通信能力やアプリの処理方法などを含め、ほぼ並んだと言っていいだろう。
逆に言えば、Apple Watchはこれまで「OSの制限でiPhoneがないと使えないから」と言っていた部分が解消され、言い訳の効かない状況になってきたのも事実だ。機器の使い勝手はスペックだけで語れるものではないし、むしろその使い勝手、ユーザー体験といった部分こそがアップルの最も得意とする分野だけに、そう簡単に譲るとも思えない。
となると、今度こそ真価は「アプリによる」となってくるが、Apple Watchのネイティブアプリが解放されたことで、多くの開発者たちが開発に取り掛かっているはずだ。これまで様子見だった開発者も積極的に参入してくることが予想され、Android Wearでも同様にアプリ開発が進むはず。ウェアラブル時代の真価が問われるのはこれから、ということになりそうだ。