直近のニュース記事をピックアップして、「家電的な意味で」もうちょい深掘りしながら楽しい情報や役に立つ情報を付け加えていこう……という趣向で進めている当連載。今回採り上げるニュースは以下である。

といっても今回はニュース解説ではない。Surface 3の日本語版実機に触れる機会を得たので、取り急ぎ、その使用感について報告しよう。一言でいえば、「これはヒット商品になる可能性を秘めた、とても良い製品だ」ということである。

Surface 3本体。写真は、別売のタイプカバーキーボードおよびペンをセットにしたものだ

数値以上に快適な「Atom X7」

まず、Surface 3について、スペック的な面を確認しておきたい。Surface 3は、CPUにインテルのAtom x7-Z8700(4コア/1.6GHz、最大2.4GHz)を採用した2-in-1型のWindows PCで、ディスプレイは10.8型・1,920×1,280ドット(画面縦横比3:2)、重量は約641g(本体のみ)と、コンパクトさ重視の製品になっている。昨年発売された「Surface Pro 3」がCPUにCore iシリーズを採用し、重量800gという、比較的「性能重視」の製品であったことに比べると、数字上の差は大きい。マイクロソフト側も、価格・性能の点から「iPad対抗製品」であることを強くアピールしている。

iPad対抗としてどうか、という話の前に、まず2-in-1タブレットとして使ってみてどうか、という話をしよう。2-in-1 Windowsタブレットの良さは、コンパクトなタブレットとしても、フル機能のWindows PCとしても使えることだ。ここは他の製品もSurface 3も似ている。

ただ従来のWindowsタブレットは「重い」か「パワー不足」かのどちらかだった。Core iシリーズならパワーは十分だが大きく重くなるし、既存のAtomでは能力が不足し、PCとして日常的に使う場合に不満が残る。

マイクロソフトがSurface 3に自信を持っているのは、CPUがAtom x7シリーズに変わったからだ。「従来のAtomはパワー不足。X7はとても良いプロセッサだ。マイクロソフトはインテルと共同で開発にあたり、このプロセッサを初めて使った」と、米マイクロソフトでSurface 3のマーケティングを統括するブライアン・ホール氏は言う。マイクロソフトが「iPadキラー」を作るには、消費電力が低いうえに、パフォーマンス面では申し分のない新世代Atomが必要だった、ということなのだろう。

実際使ってみると、確かになかなか快適だ。重いゲームなどはやはり厳しかったが、MS Officeを使ったり、Webを閲覧したりする際に「重い」と感じるシーンはなかった。タッチカバーキーボードをつければ、バンドルされている「Office Premium Home & Business」を使い、バリバリ仕事ができる。Photoshopで写真加工もしてみたが、もはや数枚の処理ならこれで問題ないな……とも思える。マイクロソフトは「Surface 3のAtom x7は、Core i3に比べ80%のパフォーマンスで動作する」(ホール氏)としているが、まあ確かにそんなところかな、とも思う。

ペンでドローイングしている時も、メモレベルならば動作速度に起因するもたつきは感じられない。まさに「小さく軽くなったSurface Pro 3」だな、という印象だ。このサイズでPCとしての万能感があり、ペンも使えるというのは、他にない魅力といっていい。文書作成を行うなら、この要素は外せない。

だが、マルチプラットフォームのベンチマークソフト「GeekBench」の結果をチェックすると、意外なことがわかる。Surface 3のデータはiPad Air 2より一回り低いものなのだ。この辺は、実際の体感とは異なる印象である。

GeekBenchの値。iPad Air2に比べCPU処理能力は2、3割低い値だ

ここからは予想だ。Atom x7は一般的なCPUコア以上に、内蔵のGPUコアが強化されている。Windowsにおいては従来、描画に関する負荷が問題であり、Atomには荷が重かった。だがGPUの性能向上で負荷が低くなり、操作が軽くなった結果、数字以上に快適になったのかも知れない。また、Atom X7はTurbo Boostに対応しており、その際のクロック周波数は2.4GHzまで上がる。使ってみると、Surface 3は意外と温かくなる。本体上部(裏面のWindowsマークより上の部分)を触ると、かなり明確に「温かい」。タイプカバーキーボードを使っていると、本体に触れる時間が短いのでほとんど気にならないが、本体を手に持って負荷の重い処理をするなら、やはり違和感があるはずだ。

「動作が重い」と感じる時もある。それは、ソフト起動時や多くのデータ読み込みが必要になる場合だ。Surface 3のストレージはeMMCであり、転送速度は一般的なSSDに劣る。そのため、ストレージアクセスが多くなると、高速なSSDを持つ製品との差は目立ちやすい。そう考えると、快適さはメインメモリが2GBのモデルより4GBのモデルの方が上になるだろう、という予想がつく。今回試用しているのはメインメモリ 4GB・ストレージ 128GBのモデルだが、快適に感じるのはそのためかも知れない。ストレージは外付けドライブでカバーする方策も立つが、Surface 3の場合、メインメモリは増やしようがない。なので、予算が許すのであれば、強く4GBモデルをおすすめしたい。