KDD R&D LABS(KDDI研究所)の高周波通信
KDD R&D LABSでは、5Gで脚光を浴びている60GHz通信に対して2つのソリューションを展示していた。一つは、列車内を想定した60GHz帯のサービス展開を応用した例だ。
電波は周波数が高くなればなるほど、光に近い性質を帯びる。このため、直接見える場所同士でないと(遮蔽物があると)、電波は遮られてしまう。そこで列車内の天井にアルミの反射板を置くことで、前席の背もたれで遮られる電波を反射して、周囲に伝えるというデモだ。
10cm四方のアルミ反射板を列車内の天井に配置することで、後ろの席でも1Gbps以上の転送レートを確保していた。ちなみに、無線通信のアクセスポイントを手で覆うだけで、ガクっと転送レートが落ちる。かなりデリケートだ。
【左】高周波のミリ波通信は、電波の性質が光に近づくため、アクセスポイントが「見えて」いないと通信に支障をきたす。そこで反射板を使って影の部分を減らし、少ないアクセスポイントでサービス領域を広げようという試みだ 【右】今回のキモとなる反射板。分かりやすくするためにアルミのままになっている |
【左】1Gbpsの通信を目標としているようで、シミュレーションでは10cm四方あればよいということだ 【右】ブース内でのライブデモ。写真では1,338Mbpsで転送されている。右の端末に手をかざすと、転送レートが半分以下に落ちるので、ミリ波通信はかなりデリケートだ |
もう一つは、「5G時代の先」を想定した大容量コンテンツの転送コンセプトデモ。大容量コンテンツのリクエストを、ワイドエリア(かつ低速)なネットワークで受け付けておき、高速な60GHz中継局に先回りして転送、ユーザーが60GHz中継局エリアに到達した時点で一気に転送するというものだ。
適切な例えではないが、「10分後に店まで行くから用意しておいて」と注文をかけると思えばよいだろう。「第5世代のスポットネットワークの活用」とタイトルがついていたので、2020年の5G時代に向けてという意味か?と聞いたところ、5G時代で実用化されるであろうヘテロジニアスネットワークと、従来のTCP/IP通信で問題となるセッション作成時間を排した「セッションレス通信」がキモのようだ。明日のまた明日の技術という印象を受けた。