Googleは何でも知っている
検索機能としては、Google Nowをさらに進化させた「Now on Tap」と、Googleの機械学習について紹介された。Google Nowはユーザーの検索傾向やGmailのメール内容、現在の位置情報などを元に、ユーザーの聞きたいことを先読みして配信する機能だが、これをホームボタン長押しで表示してくれるようになったのが、Android Mで追加されるNow on Tapだ。
Googleの検索自体、莫大なデータを複数のレイヤーからなるニューラルネットワークを用いた機械学習で徹底的に解析しており、その精度は音声認識のエラー率が23%から1年で8%へ向上するなど、飛躍的に高まっている。
こうした機械学習は「ディープラーニング」と呼ばれ、凄まじい量の演算量を割り当てることで、人間には不可能な速度で精度を高めている。Googleは世界有数のサーバー群を保有しているが、演算能力を惜しみなく費やした結果が、文脈などを理解し、推測して返事ができる検索機能となったわけだ。
基調講演では、米ミュージシャンのSkrillexの曲を流しつつ、「この人の本名は?」と聞くと、流れている曲から聞かれているのはSkrillexの本名だと推測し、その本名を検索して表示するデモが実施され、これまでの検索やデジタルアシスタントとは桁の違うパワーを見せつけた。
同様に、Google+から写真サービスだけを分離した「Google Photos」でも、アプリ自体はiOSの「写真」の焼き直しのようなものだが、その中では写真の位置情報や写っている人などから自動的にタグをつけたり、アルバムにまとめるといった処理が行われており、これらもすべて上記の機械学習が莫大な写真を処理して学習してきた結果だという。
Google Photosは無料で容量無制限に写真やムービーをアップロードできるが、これらの写真は再び機械学習の「餌」として使われることになる。前述したNow on Tapにしても、スマートフォンの位置情報やGmailのデータなどを機械検索に明け渡した結果利用できるわけで、Googleのサービスを使うということは、もはやGoogleに隠し立てできることは何一つない、という感じだ。
ディープラーニングの世界は演算リソースと時間をかければかけるほど有利になる世界であり、検索や無料サービスによって得られた莫大なデータを演算し続けてきたGoogleに追いつく企業は、ちょっと思いつかないほどだ。デジタルアシスタントはiOSのSiriやWindows 10のCortana、IBMのWatsonなど様々なものがあるが、ことモバイル環境においては、Googleが一歩も二歩も先んじたのではないだろうか。果たしてそれが、プライバシーなどの観点からも、手放しで喜べることかはわからないが……。