内蔵プレーヤを優先で起動するHTML5 Video Everywhere!アドオン
HTML5では、数多くの新機能が取り入れられた。そのなかでも、機能的にも注目されたものが、<video>タグである。これは、動画を従来のHTML内に埋め込むことができる機能である。<video>タグを使うことで、ユーザー側ではプラグインなどをインストールする必要がなくなる。もちろん、ブラウザ側でも動画再生をサポートする必要がある。
これについては、やや注意も必要で、ブラウザによってサポートするコーデックなどに差がある(表1)。
■表1 著名なブラウザごとの動画サポート状況(標準機能として) | |||
H.264(.mp4) | Ogg Theora(.ogv) | WebM(.webm) | |
---|---|---|---|
Firefox | ○ | ○ | |
Chrome | ○ | ○ | ○ |
Internet Explorer | ○ | ||
Safari | ○ | ||
Opera | ○ | ○ |
ここがややこしいのであるが「標準機能として」という前置きが付く点である。Firefoxに関していえば、Ciscoより提供されたプラグインをインストールすることで、H.264もサポートされる。同様に、Googleでは、SafariとInternet Explorer 9向けにWebMプラグインを提供する。つまり、実質的なサポートの差異は非常に少なくなっている。
この背景であるが、H.264はMPEG-LAコンソーシアムにライセンスの支払いが発生する(上述のCiscoのプラグインでは、Ciscoが支払う)。それに対し、WebMはオープンなのでライセンス料の支払いなどは発生しない。このあたりが、ブラウザを提供する側でサポートする姿勢に差が生じている。Mozillaでは、このようなインターネット技術は基本的にオープンかつフリーであるべきとの主張をしている。Mozillaらしい考え方といえるだろう。
実際には、YouTubeなどの動画サイトではWebMへの移行を進めており、HTML5化が進んでいる。これまでの動画サイトでは、Flashプレーヤを利用することが一般的であった。しかし、Firefoxでは、内蔵のプレーヤでも閲覧することが可能である。デフォルトでは、Flashプレーヤが起動してしまうことが多い。そこで、デフォルトで内蔵のプレーヤを起動するようにするのが、HTML5 Video Everywhere!アドオンである。まずはインストールから始めよう。アドオンマネージャからでは、検索してもみつからなかった。アドオンサイトで、検索をしてみた(図8)。
[Add to Firefox]をクリックしてインストールする(図9)。
再起動しなくても、HTML5 Video Everywhere!アドオンは有効となる。早速、YouTubeで動画を再生してみる(図10)。
どこがちがう? と思われる方もいるだろう。Flashプレーヤで再生したのが、図11である。
シークバーやボタンの配置が異なっている。実際に再生状態では、その違いを意識することはほとんどない。コンテキストメニューを表示すると、再生品質、標準コーデック、字幕、次の動画の自動再生など設定可能である(図12)。
HTML5 Video Everywhere!アドオンには、設定メニューも用意されている(図13)。
上から順に、次の動画の自動再生、プレーヤからYouTubeの署名を抽出、字幕の言語選択、標準コーデックの選択、動画の再生品質(このあたりは、コンテキストメニューとほぼ同じである)、動画の自動再生、動画を先読み、ボリューム設定、動画サイトごとで機能の無効化である。最後の動画サイトでは、
- Break
- Dailymotion
- Metacafe
- Vimeo
- YouTube
が、ランナップされている。つまり、これらのサイトでは、HTML5 Video Everywhere!アドオンが対応しているということである。YouTubeやFacebookに対応しているので、かなり動画を内蔵プレーヤで再生できる環境が整ったともいえる。
では、Flashプレーヤは不要になるか? 最近では、アップデートも頻繁に行われ、脆弱性が悪用される機会も減ってはきている。しかし、できればインストールしたくないというユーザーも少なくないだろう。一時期は、トップページからFlashが使われ、再生できないと次のページにすら移動できないようなWebサイトも少なくなかった。しかし、最近ではそのようなサイトもあまり見かけなくなってきた。そのような状況からも、Flashを使わないですむのであれば、ありがたいと感じるユーザーもいるだろう。
とりあえず、プラグインを無効化して使ってみた。結果からいえば、国内の動画サイトなどが問題となった。たとえば、ニコニコ動画では、図14のようになってしまう。
他の国内の動画サイトについても、Flashプレーヤのみ対応というところが多かった。このあたりの利用頻度によっては、Flashを使わないという選択はあまり現実的ではないだろう。YouTubeのような著名動画サイトがHTML5化が進んでいるのに対し、やや遅れているという印象が正直なところだ。一方、Internet Explorer 8のようなブラウザもある。当面は、Flashが消えることなないだろう。逆に、VP9(WebMの映像コーデック)やH.265などの普及も進むであろう。今後の動向にも注目したい。