国内通信事業の安定とスプリントの立て直しの道筋がついたこと、そしてそれと合わせるようにニケシュ・アローラ氏との出会いが、孫社長の方向性を大きく決定づけたようだ。「インターネットの革命は加速している。この機を逃したくない」と孫社長は話し、アローラ氏が参画したタイミングは「まさに時に人を得た」と強調する。
アローラ氏は、10年に渡って米Googleに在籍し、5年間は最高事業責任者の地位にあり、Googleの成長を支えてきた人物。孫社長との出会いは5年前からだというが、昨年7月にソフトバンクへ転職。現在は、1カ月のうちの1週間は孫社長が米国に、1週間はアローラ氏が日本へと来ることで、「月の半分ぐらいは一緒に顔をあわせている」(同)という。加えて、「ほとんど毎日のように電話でやりとり」(同)しているそうで、「朝起きたらまず電話、夜寝る前にも電話。ちょっとおかしいぐらい仲がいい」と孫社長は冗談めかして語り、親密さをアピールする。
アローラ氏は孫社長を上回る人脈、才覚があり、「多くを学んだ」という。お互いの対話で刺激し合い、投資の意思決定がより深まる、と孫社長は話す。孫社長はこれまでもたびたび後継者に対して言及し、ソフトバンクアカデミアとして後継者の発掘・育成も目論んでいたが、結局はアローラ氏が「最も重要な後継者」(同)として登場した形だ。
アローラ氏は今後、ソフトバンクグループの副社長となるが、英語の役職名は「President & COO」。孫社長は「Chairman & CEO」と、上場以来初めてという「President」職の引き渡しを行う。今回の説明会で「実質的な後継者指名」と孫社長が言うとおり、名実ともにアローラ氏が孫社長の右腕、ナンバー2と位置づけられる。
アローラ氏というパートナーを得て、孫社長は海外のインターネット企業への投資を加速していく。アリババを始め、すでに業績を上げている企業もあるが、さらにこれを拡大。若い創業者の新興企業の株式3~4割を取得して筆頭株主になり、創業者は10%程度を保持するようにして経営に参画するというモデルを展開する。