――まさにハマリ役だったわけですね

小泉監督「今回は、本当に良い人たちに出会えたと思いました。スタッフはもちろんですが、俳優さんたちも本当に良かったと思います。キャスティングのとき、家老の中根がなかなか決まらなかった。いろいろな人にお会いしたのですが、ちょっと若すぎたりして、家老としての奥行きがなかなか出し切れない。そんな中、串田(和美)さんにお会いして、この人ならと思えた。実際、これ以上は望むことのできないくらいのキャスティングだったと自分では思っています」

――『蜩ノ記』が一段落したところで、次に撮りたい作品のイメージはありますか?

小泉監督「常に撮りたいものはいくつか考えています。僕の場合、撮りたいものをまず自分で脚本にする。自分できちんとカタチにして、それに賛同してくれる人がいて、初めて前に進めるわけですよ」

――決まる前から脚本を書いていらっしゃるのですか?

小泉監督「脚本にしないとわからないんですよ、自分の中で。この脚本なら自分として責任を持って仕上げられるという自信がないと撮れないです。だから、他人の書いたもので撮ってくださいといわれても、なかなか難しいですね。自分の中でストンと落ちればいいのですが。もちろん、自分でやれると思っただけでなく、プロデューサーや俳優さんたちも同じように、これでいけるというコンセンサスが得られて、初めて映画は前に進む。黒澤さんにも言われたのですが、映画というものはシナリオとキャスティングなんですよ。これを間違えたら、どんなに腕が良くてもダメなんですよ。これだったらというシナリオができて、この人ならというキャスティングができて、それで初めて、自分としても前に踏み出せるのではないかと思っています」

――それでは最後に読者の方へのメッセージをお願いします

小泉監督「スーザン・ソンタグさんが言っていたと思うのですが、映画というものは、一回しか観られないのなら意味がない。何度か観られて、初めて映画というものはそれなりに意味を持つのだと。だから僕たちは何度でも観られる作品を、何とか作りたいと思っていますし、何度でも観てもらえるものになるように努力して頑張っているつもりです。そして、俳優さんたちもそれに耐える芝居をしてくれたと思っています。ひとつひとつの芝居、ひとつひとつの言葉を繰り返して観たり聞いたりしてもらうことで、そのたびに新しい何かを受け取ってもらえると思いますし、僕はそれを期待しています。今日は秋谷に会ってみよう、今日は庄三郎に会ってみよう。そんな感じで、何度でも繰り返し観て、新たな喜びを感じてもらえるとうれしいですし、それだけの仕事をしたと僕は思っています」

――ありがとうございました

『蜩ノ記』のBlu-ray/DVDは2015年4月15日の発売。Blu-ray/DVDともに、メイキング映像やオフィシャルインタビュー集などを収録した特典DVDが同梱される。価格はBlu-ray版が5,700円(税別)で、DVD版が4,700円(税別)。発売・販売元は東宝。

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