――当初、日山さんはどのあたりまで作っていたのでしょうか?
日山「キャラクター設定と世界設計、大まかなストーリーはありました。曲を作ってもらうにあたっては、こういうイメージの楽曲といった指示も結構細かく出しました。また、こんな歌詞をつける予定ですというイメージ歌詞も先に書いたと思います。最終的には上がってきた曲との兼ね合いで大分変わっていますけれど」
霜月「音楽的にこういうことをしたい、といった意見は私も出していて、それならこういう設定の曲があったほうがいいよね、みたいにお互いの意見を出し合いながら、コンセンサスをとって全体を構成していった感じです」
――日山さんが歌詞を書くのは、曲ができる前ですか、後ですか?
日山「詞先で書くのが苦手で。基本的には曲が先で、歌詞はそれに合わせて書くことがほとんどなんですけど、でもこのCDに関しては一曲だけ先に詩を書いたものがあるんです。最後の『捻子巻く時計が月の満ち欠けを刻む』なんですけど、これだけは最初に歌詞を書いて、霜月さんに曲をつけてもらいました」
霜月「曲を先に書くといっても、まったく何もないところから作り出すのではなく、けっこうガッツリとした曲設定を先にもらうんですよ。私自身、こういった歌詞、メッセージが入る曲ですよっていう指示がないと作り始められない人なんですけど(笑)、ほかの作家さんに指示を出す立場でもあったので、説明するために歌詞はできていないまでも、イメージワードや設定は事前にもらっていることが多いです」
――歌詞が先にできていても曲作りは基本的に変わらないですか?
霜月「設定があれば、感覚的にはあまり変わらないですね。ただ、歌詞が先にあるというケースは、私自身、数えるほどしか経験はないんですけど。この『捻子巻く時計が月の満ち欠けを刻む』については、かなり早い時期に作った作品なんですけど、最初から歌詞があったので、こんな曲つけてみたんだけど、みたいな感じで、鼻歌を聞かせるような感じで作った曲です」
日山「私の場合はゼロからの創作になるので全く違います。曲からイメージを貰って作詞をするほうがラクです(笑)。ちなみに、『月追いの都市』が出たのは2005年ですが、この曲だけは2001年くらいに出来た歌詞ですね。霜月さんから初めて鼻歌を聴いたときは、自分の書いた言葉がこんな素敵な歌になるんだ、ということに感動しました」
――その頃からすでに動き始めていたのですか?
霜月「このプロジェクトというより、ラグクーアという世界自体、日山さんと空乃さんが表現していて、私が一緒に活動し始める前からあったんですよ。それで、この歌詞は、確かWEB上で公開されていたので、それを見て私が勝手に曲をつけたのが最初です(笑)。なので、この企画のために作ったというよりは、そういうことをやっていた結果が、一緒に作品を作るきっかけになったといえるかもしれません」
――「月追いの都市」ではオルゴールが印象的に使われていますが、これはどちらのアイデアなのですか?
霜月「オルゴールは日山さんの頭にあったもので、この世界ではけっこう重要なポジションにあるアイテムですね」
日山「捻子を巻いて、決められた旋律が流れ出すといった、オルゴールの世界をなぞらえた設定ありきの世界観だったので、オルゴールの音色を入れたいとずっと言っていたんですよ。そうしたら、実際にオルゴールを作ろうという話になって(笑)」
霜月「それで、『捻子巻く時計が月の満ち欠けを刻む』のメロディでオルゴールを作ることになったのですが、実際、その当時は、オルゴールの音色を打ち込みでリアルに作る技術が私になかったんですよ。だったら、実際にオルゴールを作って、それを録音したらいいんじゃないかって(笑)。それで、オルゴールを3つ、私と日山さんと空乃さんの分だけ作って、レコーディングにも使用しました」
――完全にアナログなんですね
霜月「ただ逆に、オルゴールの弾く音とか、動作音というのは、やはり実際に作ったからこその音だし、7月のライブでも、収録したオルゴールの音に合わせて、私が実際に実物を開けたり閉めたりしたのですが、そういったことができたのも、作ったからこそだと思います」