考えれば考えるほど見つからないApple Watchのメリット
Apple Watchだけでなく、ほかのスマートウォッチも同様だが、筆者としては役割自体にひとつ疑問を感じている点がある。多くの人がスマートフォンの画面を眺め続けているのは、もちろんLINEなどのコミュニケーション手段ということもあろうが、ウェブやムービー、ゲームなどのコンテンツを見ている時間が多いように思う点だ。
特に日本の場合、電車の中でスマートフォンを覗き込んでいる人の大半はそういった用途だろう。こういう人にとって、スマートウォッチはあまり役に立たない気がする。確かに会議中など、いちいちスマートフォンを出して操作できないときにスマートウォッチがカバーしてくれるのはうれしいが、そもそもスマートフォンを出せない状況でスマートウォッチを見ている余裕があるのかという疑問も残る。いかんせんスマートウォッチはまだ目立ちすぎるのだ(ましてApple Watchであれば、余計に)。
ぶっちゃけて言えば、多くの人はまだスマートウォッチを付けて生活する図が思い浮かばないだろう。それを必要とするシーンに説得力がないのだ。筆者もいろいろ考えてみたが、日本ではApple Payが非対応という状況なので、ますますApple Watchをつけるメリットが思いつかない。
アップルはファッション市場をターゲットに、これまでのITの文脈とは違った価値観でApple Watchを売り込もうとしている。その意図は理解できるが、筆者はIT業界側の人間なので、もう少しわかりやすい楽しさ、便利さ、メリットが見えてこないことには不安が残る。「ちょっとデカいけど美しい腕時計」という程度の価値観しか演出できないのでは、ますますもって「高いおもちゃ」という評価は免れまい。
iPhoneのときも当初は「高いおもちゃ」と思われていたものが、世代を重ねるに従って完成度を高め、今や世界No.1のスマートフォンにまで成長したわけだが、Apple Watchでもこの成功を再現できるのだろうか。ハードルは高くなる一方だが、評価は実際に現物を手にとってからにしたい。