今回最大の目玉は「決済サービス」
今回のMWCでは事前にあまり注目されていなかったが、フタを開けてみると大きなトピックとして転がっていたのが「モバイルペイメント」、つまり「携帯やスマートフォンを利用した決済サービス」だ。Apple Payが一定の成功を収めた後、状況が急速に動きつつあり、このMWCで一気に表面化してきた。
その筆頭にあたるのが「Samsung Pay」で、MWC会期前日に発表された「Galaxy S6」「Galaxy S6 Edge」向けの決済サービスとして発表された。NFCとバーコードでの支払いに対応し、このあたりはApple Payに近い。Samsung Payの特徴はさらに「スマートフォンで磁気ストライプのカード読み取り機での支払いが可能」という点で特徴があり、支払いボタンを押してスマートフォンをカード読み取り機に近付けると、カードの磁気情報に相当する無線電波がカード読み取り機へと入力され、ちょうどカードを読み取り機に通した(Swipe)と同じ効果が得られる。これはつい少し前の2月に買収が発表された米LoopPayの技術をベースにしたもので、もともと両社は昨年末に提携が発表されており、今回のGalaxy S6へのSamsung Pay導入はその延長にあるとみられる。
Samsung Payはカード情報を秘匿化(トークン化)する「トークナイゼーション(Tokenization)」という仕組みに対応しており、デバイス内に保存されるカード情報はこのトークンとなる。Samsungでは当初米国と韓国でのSamsung Pay開始を発表しているが、現在トークナイゼーションは米国でしか提供されておらず、最初の提供地域は米国に限定されるとみられる。
ポイントは、携帯キャリアやサービスプロバイダではなく、端末メーカー自らが支払いサービスに乗り出してきた点で、これはGoogleが過去にさんざん携帯キャリアとの軋轢で「Google Wallet」のローンチでつまづいてきたように、これまでの情勢では非常に難しかったことだ。
だがApple Payの存在が許容されたことを契機に、Samsungもまた独自の決済サービスの提供が可能になる土壌ができていたとみられる。同社はもともと2年前のMWCでVisaと共同でGalaxy S4を使った独自の決済サービス提供を模索していたが、結局2年間それは陽の目を見ることがなかった。理由はGoogleが失敗したケースと同じで携帯キャリアの同意を得られなかったことが一番大きいと思われるが、今後はSamsung Payのようにキャリアの"くびき"を逃れて独自サービスを展開するケースが増えるとみられ、ある意味で最近の携帯トレンドの最たる例だといえる。またSamsung Payにはいくつか秘密があるのだが、このあたりの詳しい解説は後ほど別のレポートとしてまとめたい。