軽量化の鍵は2つの新技術

では、「LaVie Hybrid ZERO」において、一層の軽量化を実現できた技術とはなんだったのだろうか。

ひとつは、2-in-1型で採用したFFF構造のタッチパネルだ。「この技術の採用は、2-in-1形状を実現する上での前提になった」と小野寺執行役員が語るほどの最新技術である。

軽量化の鍵は液晶構造と天板。液晶のタッチパネルには、新たにFFF構造を採用

FFF構造とは、X方向とY方向のPET電極フィルムの上に、PETフィルムを採用する方式で、「Film-Film-Film」という構造の頭文字をとって、FFFと呼ばれる。一般的なパネルでは、PETフィルムの部分がガラスとなっており、GFF(Glass-Film-Film)構造と呼ばれる。FFF構造では、重さの原因となっていたガラス(G)部分を、フィルム(F)に置き換えることで、大幅な軽量化を実現したのだ。

さらに、従来モデルでは、0.25mmの厚さだったパネルを、0.2mm厚のパネルに変更。初代モデルの0.4mmに比べて、半分の薄さとすることで、軽量化と薄型化を実現した。薄型化という点では、タッチパネルと液晶を直接貼り合わせるダイレクトボンディング技術を採用した点も見逃せない。これは薄型化とともに操作性を高めることに寄与している。

さらに、筐体一体型液晶設計を採用。筐体に液晶パネルを直接組み込む一体成形によって、金属フレームを省くことができた。これも軽量化に貢献した。これらの取り組みにより、「液晶パネルまわりだけで数10gの軽量化が実現している」とする。

2つめが、超軽量化を実現するマグネシウムリチウム合金の全面的な採用だ。

「LaVie Z」までは、ボトムケースだけをマグネシウムリチウム合金としていたが、「LaVie Hybrid ZERO」では、これまでマグネシウム合金だったバックカバー(天板)部にも、マグネシウムリチウム合金を採用。これによって、数10gの軽量化が実現したという。

天板には新たにマグネシウムリチウム合金を採用した

「従来モデルで、天板にマグネシウムリチウム合金を採用できなかったのは、天板の複雑な形状で成形ができないという課題があったため。そこで、新たに鍛造方式でマグネシウムリチウム合金を成形する手法を導入。これによって天板にも採用できるようになった」という。

鍛造方式とは、金型に高い温度の素材を流し込み、押し出すようにして成形する方法だ。ボトムケースのマグネシウムリチウム合金で導入しているプレス方式の成形に比べて、複雑な加工が行える反面、温度管理が難しく、さらにバリが出た部分を手作業で処理するなど、コストがかかり、量産には不向きな側面もあった。

「マグネシウムリチウム合金を鍛造で成形できる会社をようやく探しだし実現した。マグネシウムリチウム合金の鍛造による成形は世界で初めてのもの」とする。

また、キーボード周りのトップケースには、マグネシウム合金を採用しているが、ここには鋳造方式を用い、厚さ0.4mmという薄型化を実現している。

キーボード周りのトップケースには0.4mm厚のマグネシウム合金を採用して軽量化

基板は小型化しすぎると重くなる

そして、基板の開発にもNECパーソナルコンピュータならではの発想をもとにした手法を導入。これも軽量化を実現することにつながっている。

一般的にノートPCの基板は、小型化することで、軽量化を図る手法が用いられる。基板上の余計なスペースがなくなれば、当然その分軽くなる。ただ、あまりにも小型化すると、今度は層が積み上がり、逆に重くなってしまうことになる。

「軽い部品を採用したり、実装効率をあげるといった取り組みはもちろんだが、あるところまで小型化するとスレッシュホールド(しきい値)を超えて、逆に重くなるということがこれまでの経験からわかっている。基板のサイズは大きくても、最も軽くなるサイズはどれかという手法を採用しているのが、『LaVie Hybrid ZERO』の基本的な姿勢だ」とする。

「LaVie Hybrid ZERO」では、8GBメモリの搭載により、部品総数は増加する。その上で、小ささよりも、軽さを重視した基板設計を行っているという。

そして、細かい軽量化への取り組みは随所にみられている。たとえば、2-in-1型では、液晶部が360度回転する仕組みとしているため、構造上は、レノボのYOGAシリーズで実現しているような「テントモード」での利用も可能になっている。

だが、「LaVie Hybrid ZERO」では、テントモードにした場合には画面の上下方向が回転せず、テントモードとしての利用はできない。実はこれは軽量化へのこだわりによるものだ。テントモード時には机などに当たる下部にゴムを配置しなくてはならない。実際、YOGAシリーズでは、テントモード時の利用を配慮したゴムがつけられ、利用時の安定性や衝撃緩和を実現している。しかし、「LaVie Hybrid ZERO」では、軽量化を最優先。重量増の要因となるゴムの採用を見送り、これによって、テントモードでの利用を見送ったのだ。

「LaVie Hybrid ZERO」が軽量化を最優先して開発されたことは、こうした数々の取り組みからも明白だ。だが、あまりにも軽さが優先されると、耐久性に不安が残るのも事実である。

しかし、小野寺執行役員は、「『LaVie Hybrid ZERO』は、NECの技術に期待をしていただいているユーザーを裏切らない製品。耐久性にも、パフォーマンスにも一切妥協はしていない」と語る。

外出先に持ち運んで、少し雑に取り扱ってもびくともしない堅牢性を実現するため、本体形状などにも工夫を凝らしているという。日本のユーザーの期待を裏切らないという点では、日本固有の満員電車のなかで押しつぶされても液晶が割れることがないという設計にされている。筐体一体型キーボードの採用により、70本のねじを用いて、直接本体のキーボードを固定。タイピング時にたわまない強度も実現している。

そして、パフォーマンスについては、第5世代のIntel Coreプロセッサの採用とともに、WQHD(2,560×1,440ドット)のIGZO液晶パネルを採用。最大11.6時間のバッテリ駆動、最大312MB/secの高速化を実現したSDXC UHS-II対応のSDカードスロット、ヤマハ製Audio Engineの搭載なども特徴だ。

アンテナ部は異なる素材を使用して効率を高めた

そして、2-in-1モデルではタブレットモードでもアンテナ性能を確保するため、パームレストおよび底面前方にプラスチックの別パーツを採用していることも、パフォーマンスを十二分に発揮するためのこだわりといえる。