著作権法違反以外の有罪判決を紹介

石原氏の説明によれば、国家機関の不正コピーに対する取り締まりや対応が変化しつつあるという。従来は、不正コピー品や、ライセンス条項で定めた台数以上のPCへインストールしたケースを著作権法違反としてきた。ここでいう「不正コピー品」は、路上販売やネットオークションなどで不正に入手したアプリケーションをインストールするケースだ。

後者は、「1ライセンスに付き2台のPCまでインストール可能」といったアプリケーションを、5台や10台とインストールするケースが該当する。現在でもこのような事例が大半だと石原氏は述べていた。

不正コピーしたアプリケーションのインストールや、ライセンス条項で定めだ台数以上のPCへインストールする著作権法違反による告発が、従来の法的対応となる

近年は新たな法的対応として、商標法違反、私電磁的記録不正作出・同共用罪、不正競争防止法違反といった裁判所判断が下されるケースが少なくないという。石原氏は2014年3月から2015年2月までの判決結果を用いて、従来では不正を突き詰められなかったケースが減少してきていることをアピールした。

近年は不正競争防止法など他の法律を適用し、不正コピーユーザー・企業に法的対応するケースが増えてきたという

著作権法違反を含む各法に違反・有罪が下ったケースを紹介。単なる不正コピーだけではなく、Crackツールを販売・提供したものが多い

前述のとおり、不正コピーは情報提供者がいないと不正を追及することはできない。だが、商標法違反の例では、プロダクトキーをネットオークションに出品した例や、Crackツールを販売する個人や業者が「Windows」という商標を用いたことで、裁判所は有罪を下している。

聞き慣れない不正競争防止法違反の例は、Officeのライセンス認証を回避するツールを提供したユーザーが有罪になった。これまでは限りなく黒に近かったキージェネレーター、ライセンス認証偽装といったCrackツールを提供・販売した例が有罪になっている。

このように、国家機関の対応が幅広くなっている理由の1つとして石原氏は、BSAの捜査協力があることを明かした。例えば私電磁的記録不正作出・同共用罪で有罪が下ったケースは、栃木県 警察本部 生活環境課および栃木署の依頼により、BSAは情報提供や意見書を提出。

その結果、商標法違反の疑いで男性が逮捕されたが、約1カ月後には詐欺の疑いで再逮捕に至っている。最終的に男性はOfficeに類似する商標をWebサイトに掲載した商標権侵害と、TechNetの購入に虚偽の情報を用いたことで私電磁的記録不正作出・同共用罪の両者で有罪判決が下った。

プロダクトキーとCrackツールの販売を行った男性の裁判結果。こちらは商標権違反を適用している

同じ男性に対しては、さらに私電磁的記録不正作出・同共用罪も適用した

個人的な見解を述べると、これまでは不正コピー・不正使用が摘発される例が目立っていた。しかし近年は、Crackツールの販売・提供も違法として有罪となる例が多いことを改めて実感した。