未来を見据えるMicrosoftの目指す先とは

話は前後するが、加治佐氏はMicrosoft/日本マイクロソフトの開発モデルに関しても言及していた。Microsoft Researchの変革と同じ、Microsoftの開発姿勢は俊敏な開発モデルを採用し、テレメトリー的にユーザーフィードバックを重要視する姿勢にシフトしているという。昨年からプレビュー版を公開しているWindows 10も約80万件のフィードバックを踏まえ、柔軟な開発に活かしているそうだ。

現在のMicrosoft/日本マイクロソフトの開発ポリシー。アジャイル開発やパートナーシップ、オープンソースとの連携に、クラウドや機械学習といった要素が寄与している

開発モデルの革新は社内にとどまらない。従来は競合相手といわれていた企業や、オープンソース陣営とも手を取る姿勢を打ち出したのは記憶に新しい。開発環境であるVisual Studioの事実上の無償化や、iOS/Android用アプリケーションを開発できる「Xamarin」との連動は業界どころか、日本マイクロソフト社内でも驚愕の事実として伝えられたそうだ。とある関係者は「(Microsoft/日本マイクロソフトは)どこへ向かうのか?」と、先の発表を聞いた時の感想を筆者に語っていた。

10年前では考えられないのがオープンソースとの連携。その結果としてW3CやISOといった150を超える組織と連携し、新しい標準化に参画している

Microsoft/日本マイクロソフト自身が革新を起こすため、さまざまな要素が互いに連動する必要性があると加治佐氏は説明した

近年のMicrosoft/日本マイクロソフトは、過去のいわば"帝国的"な発想で突き進んできた同社を知るユーザーとして、違和感どころか、"異なる企業ではないか?"と首をかしげるようなアクションを次々と打ち出している。Gates氏、Steven Ballmer氏、そしてNadella氏、CEOが変わることでこれほど企業の姿勢が変化するのは米国的とは理解しつつも、「モバイルファースト、クラウドファースト」や、IoT(Internet of Things)の具現化など、現状を踏まえると素直に納得できるだろう。

最後に加治佐氏は、リアルタイム翻訳を実現した「Skype Translator」を引き合いに出し、「2015年中に日本語版をリリースできる」と述べている。パーソナルアシスタントシステムのCortana(コルタナ)しかり、同システムを搭載するWindows 10しかり、Microsoft/日本マイクロソフトは2015年もIT業界の中心に位置しそうだ。

阿久津良和(Cactus)