Microsoft Researchの注目プロジェクトを披露

加治佐氏は、Google Labsの猫をモチーフにした機械学習プロジェクトを引き合いに、プロジェクト「Adam」を紹介していたが、さらなる注目株として、いくつかのプロジェクトを披露した。

1つめは「Handpose」。HCI(ヒューマンコンピューターインタラクション: 人とコンピューターの対話型操作を実現する)の研究プロジェクトでは、Xbox One用Kinectを使用し、人の手や指がディスプレイにリアルタイムに映し出される映像を紹介した。

Kinectが映し出した人の手を、柔軟かつリアルタイムに軌跡をたどる「Handpose」

部屋を暗くするとフレームレートは低下するが、赤外線認識に追従が可能

明るい場所だけでなく、暗い部屋でも赤外線を使って追従できるが、その際は若干のフレームレート低下が発生するという。加治佐氏の説明によれば、この研究プロジェクトはKinect for Windows V2が内包する深度センサーを応用している。

2つめは「RoomAlive」。以前に寄稿した記事でも紹介した「IllumiRoom」を進化させ、没入型の現実世界を拡張するプロジェクトだ。

プロジェクターとKinectを組み合わせ、部屋全体を測定する

測定情報を元に仮装情報をマッピングし、ゲームステージ化する仕組みだ

上図をご覧になれば分かるように、IllumiRoomはあくまでも前方の空間をゲームなどの仮想世界と現実世界をつなげたものだ。対してRoomAliveは、文字どおり部屋全体を対象に現実社会とつなげている。

たとえば部屋全体にゲーム画面を貼り付けて、そこに現れるキャラクターを撃つ・踏む「Whack-A-Mole」や、仮想的な罠を仕掛けた場所に人が近づくと罠が発動する「Traps」といったサンプルを披露。個人的には、リビングなど既存の物理環境と、仮想的な環境をシームレスに両立する本プロジェクトは期待大だ。

部屋の各所に現れるワーム(虫)を攻撃する「Whack-A-Mole」。ステージを拡大した"モグラ叩き"のようなゲームだ

部屋の各所に仕掛けた罠を踏むを発動し、派手な効果が描かれる「Traps」

3つめの「ViiBoard」は、離れた場所と場所をボードや映像・音声を使ってつなげる研究プロジェクト。以前からMicrosoft Researchは、遠隔地同士のコミュニケーションシステムをさまざまな角度から研究しているが、ViiBoardはビデオカメラと音声、そして共有するホワイトボードをインターネット経由で相互的につなげて、リアルタイムコミュニケーションを実現するというもの。こちらは会場でデモンストレーションを披露したので、下図をご覧頂きたい。

遠隔地同士をインターネット経由でつなげる「ViiBoard」。ディスプレイの向こうには概要を説明するMicrosoft Researchの公野昇氏が映っている

公野氏の息子が受けたテスト結果に加治佐氏が点数を付けるというデモンストレーション。ネットワーク環境などは明かさなかったが、スムーズに応答してコミュニケーションも円滑に行われた

最後は「Sway」だ。2014年後半にMicrosoftが発表したOfficeスイートの1つだが、こちらもMicrosoft Research出身。会場ではベータテスト中のWeb版だけではなく、開発途中のiPhone版を使ってSwayの機能を紹介した。Swayは撮影した画像や思い浮かんだテキストといった内容を組み合わせ、独自のデザインエンジンを介した1つのコンテンツを生み出すツールである。

「Sway」にはテキストや静止画、動画などをワンステップで挿入できる

日本マイクロソフトの鵜飼佑氏は現在開発中のiPhone版を披露した

会場では日本マイクロソフトの開発担当者である鵜飼佑氏が登壇し、同社広報チームが作ったコンテンツや、即興で作成したコンテンツを披露した。一昔前はユーザーが発する情報はWebページというのがお決まりの流れだったが、現在は動画をはじめ多様な選択肢が存在する。Swayは、このような飛躍的なアイディアを具現化するツールとして研究されてきた。なお、Swayに関しては現在取材を進めているので、タイミングを見てその内容や注目ポイントを改めて紹介する。

Swayはサーバーサイドでデザイナーの思考をアルゴリズム化し、適切なデザインを提示するが、日本マイクロソフト独自のアプローチとして、"カワイイ"デザインを用意中