実験結果から見えてきた細胞への影響
――では、実際にブルーライトが網膜に届くとどのような影響が出るのですか?
井上:ジェイアイエヌでは、マウスを使った実験を行い、ブルーライトの影響を検証しました。「全ての光を通す箱」、「UV光(紫外線)を遮断した箱」、「UV光(紫外線)とブルーライト約50%を遮断した箱」に分けたマウスのうち、「全ての光を通す箱」に入ったマウスに比べ「UV光(紫外線)とブルーライト約50%を遮断した箱」に入ったマウスでは視細胞の細胞死が2/3に抑制されていたんです。さらに、ブルーライトをカットしたマウスは、光を受容する視細胞(OS部分)の厚みが、カットしていないマウスと比べ3倍もの厚さに保たれていました。
――恐ろしいですね。つまりブルーライトを浴びたマウスは大きく目が傷ついているということですね。
渡辺:以前から、睡眠障害や眼精疲労への影響があるということは言われていたのですが、こうした実験により細胞にも影響を与えていることがわかりました。正直、私達が想定しているよりも影響があったと言えます。
――細胞が死んでいるということで最悪の場合として失明もあり得るのですか?
井上:色を捉える細胞が死んでしまいますので、繰り返してしまうと失明に近い状態にもなりえます。
渡辺:網膜が傷つくことによって生じる眼病はたくさんあって、加齢黄斑変性症など失明原因になる眼病を誘発する恐れがあると言われています。一概に必ず起こる、どのくらいの光を浴びたら発症するという因果関係は解明できていないのですが、そうした可能性もあるというのが今回の実験結果ですね。
井上:ほかにも、ブルーライトは朝日に多く含まれている光ですから、サーカディアンリズム(生活リズム)に影響を与えます。光によって食事の時間やバランスがズレてくるんですね。そうすると肥満になったり、ホルモンバランスが崩れてしまう、肌の荒れなども影響として出てくる場合があります。