スマートフォンは、各社各様といった様相だ。
モバイル事業の改革が早急の課題となっているソニーは、モバイル・コミュニケーションの売上高が前年同期比5.5%増の6,227億円、営業損益は1,961億円減の1,747億円の赤字となった。
損益悪化の要因は、営業権の減損として1,760億円を計上したことに加えて、販路拡大のためのマーケティング費用や、研究開発費が増加したことを理由に挙げている。また、今回発表した業績悪化の発表を背景に、年間の出荷台数見通しを200万台下方修正し、4,100万台とした。
吉田憲一郎CFOは、「中国でのスマホ事業を大幅に縮小することを軸とした1,000人の人員削減、中国市場向けの専用モデルの開発、販売の中止など、普及価格帯の製品の減少が理由。中国は世界最大のスマホ市場であり、そこのビジネスを縮小していいのかという議論も社内ではあったが、いまは業績を立て直すフェーズであるとの認識のもとにこれを決定した。将来に渡って中国市場をやらないというわけではない」と説明した。
一方、11月16日付でソニーモバイルコミュニケーションズの社長に、ソニー本社で業務執行役員SVPを務める十時裕樹氏が就任することについても言及。「平井(ソニー・平井一夫社長)の期待は、各国のキャリアとの関係強化や商品力強化によって収益構造を安定、向上させ、ソニーモバイルコミュニケーションズの変革を促すことにある。すでに変革プランの策定には着手しており、11月25日にもこれを発表することになる」とした。
モバイルのトップに任命された十時氏は「モバイルの収益性改善にフォーカスしていく。業界全体が速いスピードで動くなかで、経営スヒードもあげていかなくてはならない。売れるという前提に基づくのではなく、すべての製品を合理的に作り、合理的にマージンを確保するといったことが大切である。ソニーはいい商品を作る力がある。これを丁寧に磨き上げていけば、収益力が高まると考えている」とコメントした。
11月25日に明らかになるソニーのモバイル・コミュニケーション事業の変革プランに注目が集まる。
シャープは、デジタル情報家電事業のうち、携帯電話の販売金額は前年同期比1.8%減の859億円、販売台数は0.5%減の241万台となった。「IGZO液晶搭載や、狭額縁デザインのEDGESTを国内3キャリアへ展開するなど、高付加価値スマートフォンの市場投入や、コストダウン推進効果が損益に寄与している。売上高は前年同期を割り込むものの増益を確保した。通信キャリアとの連携強化により特徴的な端末の創出を図る」と、シャープ・高橋興三社長は語る。
富士通は、PCおよび携帯電話として合計の売上高を公表。先にも触れたように同部門の売上高は前年同期比6.0%増の3,457億円となった。「携帯電話は、らくらくシリーズなどのフィーチャーフォンが伸長したものの、スマートフォンの競争激化や新機種投入の減少などが影響し、減収になった。だが、構造改革効果や品質安定化に伴う対策費用の減少、コストダウン効果などにより、前年同期の3桁(100億円)の赤字から黒字転換。大幅に改善した」(富士通の塚野英博執行役員常務)という。黒字転換を図ったことで今後、どんな成長戦略を描くのかが注目される。
スマートフォンでは、ソニーの回復の遅れが目立つが、シャープ、富士通は少しずつではあるが、トンネルから抜け出そうという気配が見られているようだ。