日本科学未来館は10月22日から、3Fの常設展示「未来をつくる」の情報系のコーナーである「メディアラボ」において、日本のバーチャルリアリティ研究の第一人者である舘暲(たち・すすむ)工学博士(東京大学名誉教授、慶應義塾大学(慶応大学)特別第招聘教授、慶応大学大学院メディアデザイン研究科(KMD)国際VR研究センター長、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業(CREST、さきがけ)「さわれる人間調和型情報環境の構築と活用」プロジェクト研究代表者)が監修した、14期展示「まず!ふれてみよ - テニトルセカイ ツナグミライ -」をスタートさせた(画像1)。期間は、2015年5月11日までの半年強となっている。

例によって内覧会に参加したほか、今回は未来館研究棟にある舘研究室を訪問することもでき、テレイグジスタンス研究のために開発された能動的触感伝送プラットフォーム「TELESAR(テレサ) V」(画像2)によるデモンストレーションを拝見することもできた。それも併せてお届けする。

画像1(左):「まず!ふれてみよ - テニトルセカイ ツナグミライ -」のパネルの前で、舘博士(中央の立っている人物)と、南澤准教授(一番左の立っている人物)と、研究室のスタッフで記念撮影。タイトルパネルには、タイトルの各文字の下に穴が開けられていて、そこに手を入れてみると何かに触れるので、ぜひご自分で試してみてほしい。画像2(右):TELESAR Vの代理ロボット。TELESAR Vとは正確にはシステム全体を指す名称で、これはその中の装着者の代わりを務めるロボットである

メディアラボはコーナーとしては常設展示だが、研究者やデジタル系アーティストによる「作品」の個展形式を取っており、おおよそ半年ごとに展示内容を一新する未来館の中でもちょっと特殊な半常設展示だ。情報技術と創造性を結びつけたデジタルアートを(初期の頃はデジタルアートの中でも「デバイスアート」を題材としていた)、子どもたちでも楽しめるような体験型コンテンツとして展示し、そこに使われている先端技術を知ってもらうと同時に、直に触れてもらうことをも目的としている。小誌でも、ほぼ3年前に行われた第9期からお届けしており、今回で6回目となる。

しかし、今回は、いつも以上の展示だという印象を受けた。理由はもちろん、舘博士の展示だからだ(画像3)。舘博士は筆者の憧れのスーパースター研究者の1人で、こちらも憧れの研究者の1人であるVR・AR関係の中でも光学迷彩で知られる慶應義塾大学の稲見昌彦教授(画像4)(同氏はメディアラボも第6期展示「ジキルとハイドのインタフェース」を手がけた)の師匠でもあり、日本のVR研究を切り拓いてきた、まさにVR界のリビング・レジェンドなのだ。

ちなみに舘博士は近年ではどんな研究を手がけているかというと、盲導犬ロボット、テレイグジスタンスロボット「TELESAR」シリーズ、再帰性投影技術、全周囲裸眼3D技術「TWISTER(ツイスター)」、多視点裸眼3D技術「HaptoMIRAGE(ハプトミラージュ)」、「触原色(触覚の原色、後ほど説明)」などなど。VR系やロボット、3D映像系などが大好きな人なら、どれは1つは聞いたことがあると思う。ということで、さっそく展示内容を紹介していこう。

今回は舘博士の個展というよりも、舘博士に教えを受けた南澤考太准教授(画像5)との共同制作という形で、師弟タッグによるKMD系のメディアテクノロジーが集合しているというのが正しいところ。一部、第4回KMDフォーラムの記事でも紹介したコンテンツもある。同記事を読んでいただいた方はわかるかと思うが、KMDでは子どもや一般の方が楽しめるような形で研究内容をコンテンツ化しており、まさに未来館には持って来いの内容なのである。

画像3(左):舘博士。筆者にとっての伝説の研究者の1人。画像4(中):稲見教授。VR・AR系の第一人者といえる人物。光学迷彩は未来館で何度も展示された。画像5(右):南澤准教授。舘博士の下で、触覚系の研究を続けてきた