Apple SIMとは
講演中は特に触れられなかったが、「Apple SIM」のインパクトも大きい。iPad Air 2/iPad mini 3(Wi-Fi+Cellularモデル)のモバイル回線を有効にすると画面に複数のキャリアが提示され契約先を選べるというこの機能は、契約期間は1カ月からと短く後から変更も可能なため、海外出張など短期利用にはもってこいだ。端末上で設定を変えるだけでキャリアを変更(あるいは使い分け)できるため、購入前にキャリアを選ぶという慣習をなくしてしまう可能性すらある。
SIMの扱いは各国の通信行政/規制もからむこともあり、すぐに日本で導入されるとは考えにくいが、波紋を呼ぶことは確かだろう。IBMという法人分野に強いビジネスパートナーが後ろに控えていることもあり、通信会社もおいそれと「NO」とはいえないはず。車載端末/カーナビの分野にもSIMを巡る競争は存在するが、Appleには既に「CarPlay」という突破口がある。そしてもし、Apple SIMがiPhoneでサポートされたら……携帯電話市場におけるその影響の大きさは計り知れず、iPhoneというデバイス自体の性質まで変えかねない。今後要注目のトピックといえるだろう。
ところで、今回「iPod touch」の新製品は発表されなかった。現時点における最新機種は2012年9月発売の第5世代、まる2年も新モデルが投入されていないことになる。iOS 8のサポート対象とはなっているものの、SoCに同じApple A5を搭載するiPhone 4sやiPad mini(初代)ではパフォーマンスに不満を覚えるユーザが多いことをあわせても、じゅうぶんとは言い難い。今回新モデルが投入されなかったとなると、いよいよディスコンの可能性もあるのではないか。