――縦に横にと、複雑に絡み合う登場人物の思惑と人間関係が、この作品の見どころの一つということですね。

「組織ではよくあることですけど、板東は銀行のトップである頭取から、自分のしていることに対して『ダメだ』と言われるんです。『気持ちは分かるが、逆のことをしろ』と。当然、頭取命令ですから従わざるを得ないんですけど、頭取もはっきり『ダメ』とは言わないんですよ。『柔軟な対応を取れ』というように、言葉に含みがある。それは『もっといいアイデアがあるなら使わなくはない』とも受け取れる。ぶつかり合いつつも、相手の気分を害さずに、うまく事を進める…難しいですよね。そんな簡単にできるのならどうぞやって下さいと。でも、そういう上からの無茶ぶりって、よくありますよね(笑)」

――ストーリー全体を見渡すと、単なる企業モノではないスケールの大きさと深さを感じました。

「ひとつの会社が潰れれば、そこで働く人たちだけでなく、その家族にも大きな影響を及ぼすじゃないですか。ならば、間違っているんだけど会社を潰さないよう延命処置しよう、ガンの病巣を取り除く手術はせずに薬でごまかそう、とする。ちょっとそれはある意味、今の日本のやり方に似ているのかもしれない。良く言えばソフトランディングかもしれないけど、悪く言うと負の遺産をずるずると後輩たちに押しつけているのではないかと」

――金融サスペンスの形をとりながら、現代日本の問題を浮き彫りにしているということでしょうか。

「このドラマで描かれていることは、決して遠い世界の話ではないと思うんです。今の時代を生きる自分たちにも関係している、みんなが考えなければいけないことですよね。国民一人あたりの借金が約800万円と言われてますけど、実感がないじゃないですか。どんどん与党が変わって『ムダを排除した』といっても、結局どうなんだろう…? と。でも、他人事ではないんですよね」