FR10の最終的な形状とコンセプトには、中国や台湾などアジア圏で大ヒットとなった「TR」シリーズが大きく影響しているという。TRシリーズは中国女性の間で「自拍神器」と呼ばれ、今や憧れのカメラなのだ。また、FR10が台湾で発表された翌日、現地新聞の紙面には「無線自拍」の文字が躍ったという。
中山氏「TRで注目された女性の"自分撮り"から発展させて、女性男性を問わず"みんな撮り"ができる形、そして、撮影アングルに制限のない完全なフリーアングルができる形へと考えました。最終的に、カメラと本体が分離するセパレートスタイルに決まったのです。」
現在のマーケットに対してFR10をどう訴求していくか、また、将来的に新たなマーケットをどのように構築していくかについても、営業部門とのコミュニケーションを日々重ねた。この後者(新たなマーケットの構築)が特に重要と、中山氏は語る。
中山氏「現在の市場の中で製品を出し続けるだけでは、規模が縮小していくだけです。新たな市場と需要を創出するのがカシオらしさであり、カシオの使命と考えています。TRシリーズの成功も、失敗をおそれずに一歩を踏み出すことで得ることができたのです。
とはいえビジネスですから、アクションカムの存在という時代背景を意識していないわけではありません。そこにカシオならではの視点や技術を加えて、ひと味もふた味も違う製品に仕上げたつもりです。だから、FR10をアクションカムといわれるのは、すごくイヤなんですよ(笑)。」
では、カシオはFR10に関するメッセージをどう市場に伝えようとしているのだろうか。
中山氏「FR10は、従来のカメラとは発想が違う製品です。言い換えれば、使い方は完全に人それぞれ。使う人の趣味や経験で面白いくらい使い方が変わってきます。カシオとしては、『分離することでフリースタイルにしました。あなたなら、どう使いますか?』としか言えませんし、メーカー主導で使い方を限定しないほうが、かえっていいとも思うんです。
FR10と対話してみてください。こんな場所で使いたい、こんな位置から撮りたい、というご要望に、分離や変形、アタッチメントの装着で応えてくれるはずです。」