これまでと違う、iPadのポジショニング
Appleが2010年に作りだした「モバイルデバイスとしてのタブレット市場」において、AndroidタブレットやSurfaceに押されながらも、依然としてトップの座を死守している。
しかし状況は良くない。IDCのレポートによると、2014年第2四半期のAppleのシェアは26.9%で、前年同期のシェア33%から下落している。市場全体は1年間で約11%成長しているが、Appleは販売台数を9.3%減らしているのだ。
この結果は、成長を続けるiPhoneとは対照的だ。iPhoneはモバイルの中心的なデバイスとして、先進国から途上国へとその販売先を拡げ続けている。しかしiPadは2010年からの4年間で一旦のピークを迎えたように見える。iPhoneのように、1人1台のデバイスでは必ずしもなく、2年に1度の買い換えサイクルもない。前述の通り、iPad 2が4年間現役製品として販売され続けたように、頻繁な買い換え需要を喚起できるデバイスではないように見られる。
また、筆者は9月9日に開催されたAppleのイベントを取材し、新型iPhone 6・iPhone 6 Plus、Apple Pay、そしてApple Watchを見て感じたことは、AppleはiPhoneをメインのコンピュータとして再定義したことが明確になったという点だ。
Apple WatchはiPhoneを前提としたアクセサリとしての提案だった。また、それまでAppleを支えてきたMacですら、新OSであるOS X Yosemiteを導入するとiPhoneのアクセサリのように連携できる。画面の大型化は、かろうじてモバイルデバイスとして役割を分けていたiPhoneとiPadの境界を曖昧にしつつある。
iPadにも、新たなポジションが必要となっているのだ。
Appleは、2014年7月15日に、エンタープライズ向けのモバイル分野で、IBMと戦略的提携を発表した。コンシューマとの接点となるハードウェアをAppleが、企業向けソリューションをIBMがそれぞれ担い、小売や金融、通信、ヘルスケアなどのターゲットに対して、業務アプリケーションを共同開発する予定だ。
よりエンタープライズ向けのポジションを強化することによって、製品の特徴を深めることができるかどうか、注目している。