――その『VSデストロイア』から既に20年近くが経ち、ゴジラも生誕60周年を迎えました。
早いよねえ。ホントやんなっちゃうな(笑)。
――(笑)。今年はなんといってもハリウッド版『GODZILLA ゴジラ』の公開が話題になりました。ハリウッド版、監督はどうご覧になりました?
なかなかよくできてたと思うよ。ゴジラは全部モーションキャプチャーでやったんだってね。でも、CG特有のスピード感はなかったな。意外と鈍重で、日本のゴジラの動きを踏襲してたよね。ギャレス・エドワーズ監督と話したときに「スーツでやるつもりはなかったのか?」って聞いたら「なかった」って言われちゃったけど(笑)。
ただ、ストーリーがよく分からなかったな。ゴジラ映画って言いながら肝心のゴジラは1時間くらい出てこないでしょ。
――確かに、画面に映ってる時間は敵怪獣のムートーの方が多いかもしれないですね。
ムトーだかサトーだか知らないけど(笑)、ほとんどあっちの怪獣のストーリーだったよね。だから次はもうちょっと分かりやすく作ってほしいな(笑)。
――ハリウッド版のゴジラにしてもそうですが、今はCGが全盛の時代です。そうしたデジタル技術に対して、日本の特撮映画の強みというのはどういったところでしょうか。
CGであれば、怪獣のCG、街のCG、爆発のCGと別々に作って、それを最後にコンポジットして映像にまとめる。だけど特撮というのは全部をダイレクトに撮ってるんだよ。つまり全部実写なんだ。怪獣の動きも、破壊されて崩れる建物も爆発の炎も、全部カメラの前で起きている。だからこそ思いもよらぬ効果や計算外の芝居が生まれるんだよね。例えば『空の大怪獣ラドン』(1956年)のラスト、阿蘇山の噴火シーンとか。
――あの場面ではラドンを吊っていたピアノ線が噴火の熱で切れてしまったんですよね。そのことでラドンの動きが本当に苦しんでいるように見えたため、本来はNGになるところを円谷監督が指示してカメラを回し続けたという。
あんなの計算してできないもんね。全部をダイレクトに撮っているからこそ、ああいう素晴らしいショットが撮れるんだよ。CGは結局、作った人のイメージ以上のことは起こりえないもの。日本でこれから怪獣映画を撮るとしても、やっぱりCGやモーションキャプチャーを使うことになるんだろうけど、そこにミニチュアワークとか、そういう特撮の技法をうまく混ぜて撮るのがいいと思うんだよね。
ただし特撮はお金がかかるんだ(笑)。ハリウッドがCGやモーションキャプチャーを採用しているのは、経済的に省力化できるというメリットも大きいんだと思う。
――ただ、特撮技術を生かそうにも、それを担う次世代のスタッフの育成が不可欠です。
今は特撮作品そのものが減ってしまったからね。技術を身に付けようと思っても肝心の現場が少ない。そういう意味ではこれから特撮を目指す人にとっては厳しい時代なのかもしれないね。ただ、我々が手をこまねいていても仕方ない。実はね、今僕は大阪芸術大学で授業をもってるんだ。「映像美術論」という講座で、学生に特撮を教えてるんだよ。
――それは初耳です。具体的にはどういうことを教えているのでしょうか?
実際に学生と一緒に特撮映画を撮ってるんだ。今度も、僕が指導しながら学生が撮った作品がテレビ大阪で放映されることになってる。あべのハルカスを巨大ロボットが守るっていうストーリーなんだけどね(笑)。
――なんてぜいたくな授業なんでしょう(笑)。
今はデジタルで何度でも撮り直しが利くし後で加工もできるから、学生は片っ端からバシャバシャ撮っちゃうんだよ(笑)。だけどそれじゃあ新しい映像作りというものは生まれない。そのために特撮の、やり直しがきかない緊張感というものを教えてるんだ。やっぱり特撮は現場で学ぶしかないからね。座学なんかじゃ何も学べないんだよ。
――監督ご自身が、右も左も分からないまま『妖星ゴラス』の現場に入って一から特撮を学んできたように、今度は学生たちが同じ道を歩もうとしているわけですね。
本当だねえ(笑)。まあ僕が教えられるのはベーシックなヒントだけなんだけど、彼らの中から1人でも次の映像作りを支える監督やスタッフが育ってくれればいいなあと思ってるんだけどね。
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