ソフトバンクは今後どう動く、孫社長の考えは?
先ほどのWSJとReutersの関係者の話にも何度か出ているが、ソフトバンクとSprintともにT-Mobile買収を諦めておらず、「いまは時期が悪いだけ」と含みを持たせている。だが実際のところ、FCCがすぐに判断を変えることは考えられず、今後数年先の範囲で「買収はない」と考えていいだろう。主に大手4社で構成される米国携帯市場は硬直したまま継続していくとみられ、Sprintはローエンド市場開拓やM2M方面など、別の方向で市場拡大を目指していくことになるのかもしれない。まずは最初の足掛かりとなる料金プラン提示が重要だと考える。
ただ今回の買収失敗がソフトバンク、特に米国進出に意欲を見せていた孫氏にとって暗い影を落とした可能性はある。WSJの記事でも指摘されているが、もともとSprint買収後に経営に乗り込んできた同氏は自身のキャラクター性から他の幹部とたびたび衝突を起こしており、離脱する人員も少なくなかったという。Hesse氏との関係も例外ではなく、対立は日常茶飯事だったようだ。Sprintそのものが負け犬モードの雰囲気に包まれており、これを変えていくのは容易ではなかったと記されている。
孫氏は買収断念からClaure氏のSprint CEO就任までの過程を経て現在、どのような心境なのだろうか。筆者の個人的感想だが、以前に比べて米国に対する熱意は半分近く冷めていると予想している。孫氏飛躍のきっかけとなった米国での挑戦は大きな意味を持っていたと思われるが、そうした思いはいまどの程度残っているだろうか。
Claure氏をSprint CEOに据えたのは業績改善が急務でビジネス的に順当な判断だと考えるが、AT&TやVerizon Wirelessといったライバル2社に正面から対抗していくうえでT-Mobile買収は重要な鍵であり、これがほぼ不可能となった現在、非常に地道な経営改善を迫られることになる。少なくとも、米国最大手のキャリアの一角になるのは難しくなったといえるだろう。どちらかといえば、今後米国よりも成長性で有望なアジアを含む途上国に目を向けていくほうが、可能性としては面白いかもしれない。