SprintのCEO交替と今後

T-Mobile買収を断念したことで、Sprintは自力でネットワークを改善し、顧客を増やしていかなければならなくなった。Hesse氏がSprint CEOに就任したのが2007年だが、以後の同社は顧客ベースがほとんど伸びておらず、唯一の改善点といえるのはソフトバンク傘下に入ってからの経営効率化によるコスト削減で業績が上向いていることだ。ただし契約数を増やして売上の底上げをしない限りは根本的な業績改善にはならないわけで、むしろこれからが本番だといえるかもしれない。

Hesse氏がSprint CEOに就任したとき、同社は2005年に買収したNextelのネットワーク統合が最大のミッションだったといわれている。SprintによるNextel買収についてはいろいろいわれているが、NextelのiDENという独自規格に対し、SprintはCDMA規格とまったく異なるネットワークシステムと顧客層を抱えていたうえ、さらにはClearwire買収のきっかけとなったWiMAX事業参入、そしてLTE整備と、ネットワーク改善に対する継続投資がSprintのキャッシュフローを圧迫しており、Hesse氏はこのやりくりに忙殺されていたと考えられる。

Nextel買収は最終的にiDEN終了で空いた周波数帯を獲得できたわけで、費用対効果はともかく一定のメリットはあったと考えられる。だが「Uncarrier」戦略を打ち出して顧客獲得ペースの上昇しているT-Mobileに対し、Sprintに反転の兆しが見えないのは現状の大きな課題だ。

日本時間の6日夜にソフトバンクからプレスリリースが出されたが(PDF文書)、それによれば同社は子会社にあたる米Brightstar Global Groupの全株式をCEOであるMarcelo Claure氏から取得し、完全子会社化するという。

Marcelo Claure氏から株式取得場合の組織構成

さらにClaure氏がSprintの新CEOとしてHesse氏に代わって就任し、Brightstarは後任CEOの選定に入るという。Claure氏はボリビア国籍を持つ米国の実業家で、中古の携帯端末を入手して主に途上国を中心に販売する流通事業をBrightstarで手がけるなど、ローエンドや端末流通市場に明るい人物だ。ネットワークの整備と経営効率化にある程度めどがつき、T-Mobile買収も当面芽がなくなったいま、Hesse氏に代わり、携帯キャリア事業は未経験だがローエンド市場の開拓に明るいと思われるClaure氏をSprint CEOに据えるのは、いい判断といえるかもしれない。