米Wall Street Journalの8月5日(現地時間)の報道によれば、ソフトバンクとSprintの日米キャリア連合は米規制当局からの承認を得られる見込みがないことから、米T-Mobile USA買収を断念したという。正式発表は米国時間で6日にも行われるとみられるが、今回の一連の経緯を整理しつつ、ソフトバンクやSprintの今後を占ってみたい。
同件はWall Street Journalが関係者の話として「Sprint Abandons Pursuit of T-Mobile, Replaces CEO」のタイトルで報じている。おおよその経緯や背景はWSJの記事中に記されているので、まずはこれをベースに話をまとめていこう。
やはり最大のハードルは米政府による合併承認
前回のレポートでも紹介したが、SprintによるT-Mobile買収の最大の難関は、政府による承認の部分にある。かつてAT&TがT-Mobile買収を断念したとき、それを最後まで認めなかったのは米連邦通信局(FCC)だった。今回も同様で、まず独占禁止法の審査として米司法省(DoJ)が立ちはだかり、次にAT&Tの件でも問題となったFCCが通信政策に沿って判断を下す。仮にDoJの審査をクリアしたとしても、FCCが合併を承認する可能性は低いと考えられていた。
これはSprintやその親会社であるソフトバンクも承知していたと思われ、DoJやFCCの関係者ともミーティングを重ね、その機会をうかがっていたようだ。WSJによれば、ソフトバンク社長の孫正義氏はロビー活動のためのアドバイザーを多数雇い入れており、例えばロビイストのDavid Carmen氏、元上院議員のBob Kerrey氏、ロビイストでその兄弟がオバマ大統領のシニアカウンセラーであるTony Podesta氏などの協力を仰いでいたという。
だが結果的に当局側の見解は変わらず、見込みのない戦いを続けるよりは買収を諦めたほうが安全だと判断したのだろう。例えば孫氏とSprint CEOであるDan Hesse氏が直近の冬の時期にJoDならびにFCCの関係者と面会していたとき、買収に際して大きなハードルに突き当たるだろうとの警告を受けていたという。