教え方が変わらなければ、意味がない
西オーストラリア、パース郊外で世界中から注目を集める先進的な教育を施す中高一貫校、コルベ。この学校については、本連載で3回にわたって紹介しているので、そちらを参照頂きたい。コルベでも、iPadを生かした学びの変革の中で、iTunes Uでコースを作成することは重要なステップと位置づけている。
コルベで教育の変革に長年取り組んでいるのは日本人の萩原伸郎氏だ。萩原氏自身、「HAGiPOD」と名付けられた日本語学習用のPodcastを配信し、これをiTunes U化して授業で活用している。萩原氏は日本で教師生活を始めたころから、「既存の教科書や教室を使わないで教える」という独自の学びに関する哲学を貫いてきた。
萩原氏は「デバイスによって、教え方、学び方が変わらなければ意味がない」と指摘する。
デバイスを既存・あるいはオリジナルも含めたコンテンツで満たしてしまうと、教科書に沿って学習を進めるのと同じように、生徒は受動的な姿勢になってしまう。iTunes Uは、コンテンツの円滑な提供だけでなく、ディスカッションや課題の機能があるため、生徒に対して、コンテンツを読み進めるだけでなく、アクションを促すことができる。
また、前述の三雲中学校でも同様だったが、学校の中でいかにiPadを活用するか、という先生間の議論の出発点に立つためには、iTunes Uで独自のコンテンツをiPadがある教育環境に合わせて製作し、どのような授業になるのかを共有できるようにすることが必要だ。
こうして、先生が独自性を持ったコンテンツをiPadがある授業に向けて製作することは、萩原氏が述べた教え方・学び方への変化を反映した物になる。また各自が生み出したiPadに最適化された授業のアイディアが学校の中で共有可能となり、加速度的に学校内の学びの変革が進み始める。