iPadを導入した現場を取材して
iPadを導入を進めた学校から、三重県にある松阪市立三雲中学校と、本連載でも紹介した西オーストラリアにあるKolbe Catholic College(以下、コルベ)を採り上げ、iTunes Uのコース作成機能が求められる現場を紹介していこう。
いずれの学校も、iTunes Uアプリがアップデートする以前から、iPadを活用した学びを進めるために、iTunes Uアプリで実現できること、あるいは実際にウェブ版のiTunes Uのコース編集機能を使って独自の教材作りに取り組んできた学校だ。
三重県松阪市立三雲中学校は、総務省フューチャースクール推進事業で3年前から生徒全員にiPadを配布し、学びに生かす実践が行われてきた。しかし初年度は「何が何でも授業でiPadを生かさなければならない」という意識だけが先行し、思うような成果は残せなかったという。
出発点は、「なぜiPadで授業をしなければならないのか、iPadを(先生方が)習得する時間がどこにあるのか?」という先生方からの声が上がる状況だった。そこで、授業の準備の効率化や、iPadがなければ実現できない学びを作り出すといった視点から、教員室での議論をスタートさせたという。
この中で重要となったのが、iPadを生かした授業の方法やコンテンツをいかに流通させるか。授業で学ぶ生徒だけでなく、他の先生方にも簡単に見てもらい、議論を深めることが求められた。ただアプリをこのタイミングで使わせる、このアプリで作った資料を発表してもらう、というだけでなく、授業の流れの中でiPadがどのように活用されているのかがわかることが重要だった。
三雲中学校では、1年生向けの理科の授業のiTunes Uを実験的に作り、音の波形を可視化するためのアプリや実験の動画をまとめたコースや、2年生の数学の図形の授業をまとめたコースを公開するなど、先生が独自のコンテンツを作ってiTunes Uを介して配信する方法を共有していた。またiTunes Uではなくポッドキャストという形式で、英語のネイティブの先生の会話をiPadで撮影して、生徒が自由に自宅で見られるようにしていた。
iPadでビデオやアプリ活用を登録の流れをiTunes Uとしてコース化できれば、独自教材の作成が非常に活発に起きる。パソコンやビデオ機材などを用意せずに、目の前で起きていることをその場でiPadで記録し、生徒に魅せることができるようになるからだ。
特に公立の学校の課題として、人事異動や転勤が頻繁に起きることが挙げられる。授業の変革は学校の方針ではあるが、その中身や方法は現場で教える先生に強く依存する。iPadを活用した授業も同様で、iPadを上手く取り入れる先生が異動してしまうと、行った先の学校でiPadが導入されていなければ全く同じ授業はできないし、新たに入ってきた先生はゼロから自分なりの授業を作り上げなければならない。
属人性の高い授業をいかに学校に蓄積するか。そこでも、iTunes Uで作ったコースが生かされる。iTunes Uのコースという形でコンテンツや授業のカリキュラムを残すことは、新たにその学校にやってきた先生にとって、大きな参考になるからだ。