手皿はNG!

それではいよいよ実際に料理をいただいていこう。まず今回は、小鉢に入った「前菜」の「胡麻豆腐ずんだ餡かけ」が登場。柔らかなゴマ豆腐の上にカニや野菜がのっていて、目にも美しくおいしそうだが、口に運ぶ前に崩れて落ちてしまいそう。そんなときついつい手を添える「手皿」をしてしまいそうになるが…。

「手皿はNG。手の平にのるサイズのお皿は、手で持ち上げた状態で食べて大丈夫です。両手で持たないと支えられないようなサイズの皿の場合、皿に左手を添え、持ち上げずにそのまま食べましょう」と浅井さん。今回の前菜の小鉢ならば、手に持って大丈夫だという。

食べ方: (左)くずれやすい豆腐など、お皿ごと持ち上げてもOK。(右)手皿はNGだ

次は「吸物」。蓋付のお椀に入れられて出てくることが多いが、この蓋の扱いが実に悩ましい。まず開ける際に正しいのは、「左手をお椀の縁に添え、右手の親指と人差し指でおわんのつまみを持ち、手前から向こう側へ蓋をゆっくりと開けます」。

次に蓋を上向きにして両手で持ち、斜め右上の邪魔にならない場所に置いておく。時々蓋の裏に水滴がついていることもあるが、その場合は蓋を開けてお椀の上で立て、しずくが落ちるのを待つとよいそうだ。

食べる時には、両手でお椀を持ち上げた後、左手でしっかり下を持って右手を離す。その後右手で箸を持ち上げ、左手の人差し指と中指の間に箸を挟んで支え、その間に右手の位置を整える。食べ終わったときには、蓋を両手で持ってしっかり閉めること。少し蓋をずらして置いたり、蓋を裏返しにして閉めたりする人もいるが、これはマナー違反である。

蓋の開け方: (左)左手をお椀の縁に添え、右手の親指と人差し指でおわんのつまみを持ち、向こう側へ蓋をゆっくりと開ける。(中)次に蓋を上向きにして両手で持ち、斜め右上におく。(右)食べ終わった後、蓋をずらして置くのはNG

刺身の食べ方: ワサビは醤油に溶くよりも、刺身に直接つけて食べるほうが味を楽しめる

さて「お造り」では、薬味の使い方を迷いがち。「ワサビは醤油に溶いても間違いではありませんが、刺身に直接ワサビをつけて食べるほうが本来の味が楽しめますので、その方がよいとされています」。

添えてある花穂等は、箸でほぐして醤油に落として使う。また醤油の入ったお猪口は、左手で持って受け皿の代わりとして使ってよいのだそう。もちろん「手皿」はNGである。


最難関! 焼魚はこうすれば美しく食べられる

今回最大の難関と言えそうなのが、「焼物」の「鮎 塩焼き」である。ただでさえ焼魚をきれいに食べるのは難しいのに、尾頭付きの鮎はどうやったらよいのだろうか。「まず骨から身をはがしやすくするため、左手で頭を押さえつつ、箸で身の上を何度も押します。次にひれ、尻尾を箸で折り、頭と身の間の部分を、中骨を残して箸で切ります。最後に頭を手で引くと、中骨がするっと抜け、身が残ります」。ただし、中骨が途中で折れてしまうこともある。

失敗して中骨が残ってしまったら、そのまま上身を食べてから中骨をはずし、下の身を食べるとよいそうだ。ちなみに他の骨付き魚を食べる場合も、片側を食べた後にひっくり返して反対側を食べることはNG。上身を食べ終えたら中骨を外し、そのまま残り半分を食べるのが正しい。

また、食べているときに小骨が口の中に残ってしまうこともあるだろう。そんな時は、左手で口を隠しながら箸で口の中の骨をつまんで取り出してよいのだそう。あくまで手は使わない。さらに食べ終わった後は、骨や皮を皿の左隅に寄せておく。皿に懐紙等が敷いてあった場合、その紙を上からのせて見えないように隠しておくとよい。

鮎の食べ方: (左上)骨から身をはがしやすくするため、左手で頭を押さえつつ、箸で身の上を何度も押す。(右上)ひれ、尻尾を箸で折る。(左下)頭と身の間の部分を、中骨を残して箸で切る。(右下)最後に頭を手で引くと、中骨がするっと抜け、身が残る

今回の「煮物」の「野菜の炊き合わせ」にも迷いどころがある。一口で食べられない大きさのものは、箸で切ってから口に入れるのか、それともそのまま口に入れ、噛み切っていいものか……。「やわらかいものは器の中で箸で割ってから食べます。しかしレンコンなど箸で切りにくいものは、そのままかじってしまって大丈夫。ただし残りは器に戻さず箸で持ったままにして、前のひと口を食べ終わった後、そのまま食べて食べ切ります」。

今回は器が大きめでつゆが入っているので、器は手で持ち上げない。両手で持ち上げて自分側に近づけてもよいが、その後は器を下ろし、左手を添えていただこう。

煮物の食べ方: (左)やわらかいものは器の中で箸で割る。(右)レンコンなど箸で切りにくいものは、そのままかじってもOK