大型CPUクーラーを取り付け、オーバークロックに挑戦

それでは、さっそく「GA-Z97X-SOC」でCore i7 4790Kをオーバークロックし、定格動作クロックとの違いを見ていってみよう。CPUからの高い発熱が予想されるため、CPUクーラーはTDP250WまでのCPUに対応できるクーラーマスター製の「V8 GTS」に変更しておくことにする。グラフィックスカードの冷却機構などでも利用されるベイパーチャンバー方式を採用し、直径6mmのヒートパイプを贅沢に8本使用したV8 GTSは、2つの140mmファンで強力にCPUの熱を奪ってくれるはずだ。その他の構成は以下のとおり。

■テスト環境
CPU Intel Core i7-4790K
メモリ PSD38G1600KH × 2
ストレージ OCZ SOLID3 120GB
グラフィックス Intel HD Graphics 4600
OS Windows8.1 update 64bit版

クーラーマスターの大型CPUクーラー「V8 GTS」。3つのフィンのあいだに140mmファンが2つ設置されており、強力なエアフローでCPUの熱を排気する。エンジンのような独特のデザインにより、システムを彩ってくれるだろう

倍率と電圧を変更し、全コア4.7GHzにて安定動作

CPUのオーバークロックには基準となる周波数であるBCLKを変える方法と、基準からの倍率を変更する方法がある。昔はBCLKを上げる手法が主に用いられていたが、数世代前のアーキテクチャからBCLK変更が非常に難しくなった。よって今回は、Kモデルのオーバークロック手法としてリスクの少ない、クロック倍率変更によって動作クロックを上昇させることにする。マザーボードの自動オーバークロック機能を利用してその際の設定を確認し、電圧等の数値を下げていくという手順で、結果としてはCore i7 4790Kを4.7GHzで動作させることに成功した。最終的なCPU電圧は、ある程度マージンを見て1.39Vに設定している。定格クロック4.0GHzのからみれば0.7GHzの向上だが、Core i7 4790Kはターボ・ブースト・テクノロジー(TB)時には2コアのみとはいえ4.4GHzまで達する。その差はどう出るか、ベンチマークを試していくことにしよう。

UEFI BIOSでCPUのクロック倍率や電圧を変更し、トライ&エラーで安定動作環境を探っていく。今回は、CPU電圧1.39Vで4.7GHzが安定動作した

新しいUEFI BIOS画面に慣れない人は、以前からのBIOS風画面も選択可能。日本語表示にも対応しており、設定項目に詳しくない人でもある程度内容を把握できる

Core i7 4790Kを、4.7GHzまでオーバークロックすることに成功!

クロック分の確実な上昇が見込める4790Kのオーバークロック

それでは、各種ベンチマークテストの結果を見ていくことにしよう。はじめに、Windows システム評価ツール「WinSAT formal」を利用してWindows エクスペリエンス インデックス スコアを測定。プロセッサとメモリの2項目を比較したところ、ともに0.1ずつの向上が確認できた。まずは順当な結果だ。

続いて「CINEBENCH R15」にてCPUのスコアを確認。こちらも、向上したクロックに比例してしっかりとスコアが上昇している。Futuremarkの定番ベンチマーク「PCMark8」では、伸び幅は少ないものの、全体のスコアが確実に向上しているのが確認できる。「3DMARK」はグラフィックス処理能力に寄るところが少なくないが、物理演算をCPUで処理するPhysics Scoreではなかなかの差が出ているようだ。ゲームベンチとして「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編」も試したが、こちらも結果はほぼ同様の傾向だ。

■ Windows エクスペリエンス インデックス スコア
4.0GHz(TB4.4GHz) 4.7GHz
プロセッサ 8.5 8.6
メモリ 8.5 8.6
■ CINEBENCH R15
4.0GHz(TB4.4GHz) 4.7GHz
CPU 888 cb 942 cb
CPU (Single Core) 173 cb 188 cb
MP Ratio 5.14 x 5.02 x
■ Futuremark PCMark8 「Home conventional」
4.0GHz(TB4.4GHz) 4.7GHz
Your Work 2.0 Score 3517 3581
Web Browsing - JunglePin 0.315 s 0.313 s
Web Browsing - Amazonia 0.134 s 0.134 s
Writing 3.19 s 3.09 s
Photo Editing v2 0.325 s 0.315 s
Video Chat v2 / Video Chat playback 1 v2 30.0 fps 30.0 fps
Video Chat v2 / Video Chat encoding v2 43.0 ms 40.7 ms
Casual Gaming 33.3 fps 33.6 fps
Benchmark duration 29min 29s 29min 25s
■ Futuremark 3DMARK 「Fire Strike1.1」
4.0GHz(TB4.4GHz) 4.7GHz
3DMark Score 856 880
Graphics Score 906 933
Physics Score 11804 12557
Combined Score 306 312
Graphics Test 1 4.26 fps 4.42 fps
Graphics Test 2 3.67 fps 3.75 fps
Physics Test 37.47 fps 39.86 fps
Combined Test 1.43 fps 1.45 fps
■ Futuremark 3DMARK 「Fire Strike1.1」Futuremark 3DMARK 「Fire Strike1.1」
4.0GHz(TB4.4GHz) 4.7GHz
1280×720 標準品質(デスクトップPC) 5652 5788
1280×720 高品質(デスクトップPC) 2532 2562

動画エンコードで見るオーバークロックの差と消費電力

ベンチマークテストでは、上がったクロック分に応じたスコア結果となったが、実際にアプリケーションを使用した場合はどうだろうか。実際に「TMPGEnc Video Mastering Works 5」を利用して、1920×1080ドットのTSファイル542MBを、1280×720のMP4ファイルに固定ビットレートで1パス変更してみることにした。結果としては、こちらもクロック上昇分に応じた順当な違いを確認できた。同時に消費電力と温度を計測したのだが、x264エンコードでは今回試した各ベンチマーク以上に負荷がかかり、かなり温度が上がってしまった。定格動作であってもCPUの冷却には気を使わなくてはいけないようだ。常用するのならば、消費電力も踏まえ、どこまで動作クロックを上げるか、どこまで電圧を下げるかを突き詰めなければいけないだろう。

■ TMPGEnc Video Mastering Works 5 (CBR 1pass)
542MB 1920×1080 TS →1280×720 MP4
4.0GHz(TB4.4GHz) 4.7GHz
Intel Hardware 4分14秒 4分4秒
x264 7分23秒 7分2秒
■ 消費電力/温度
4.0GHz(TB4.4GHz) 4.7GHz
最低(Windows8.1アイドル時) 24W/28℃ 31W/31℃
最高(x264エンコード時) 156W/75℃ 198W/91℃

初心者から上級者までオーバークロックを楽しめるマザーボード

「GA-Z97X-SOC」はそのシリーズ名どおり、マニアックなオーバークロックが可能なマザーボードだ。それだけに、オーバークロックを趣味とする人以外にはオーバースペックと思われるかもしれない。しかし本モデルでは、拡張端子や拡張スロット、なぜかサウンド機能までが通常モデル以上に充実している。機能を踏まえて考えると、なんだか妙にお得なモデルだったりもするのだ。基本となるパーツや機能が充実しているため、自動オーバークロックでも良好な結果を得られることが多く、オーバークロック初挑戦の人でも成功する確立は高いだろう。この夏は組んで使うだけのPCから一歩先へ進み、オーバークロックで熱い日々を過ごしてみてはいかがだろうか。

なお、Intel 9シリーズのOCモデルは現在2モデルがラインナップされている。上位モデルとなる「GA-Z97X-SOC FORCE」では高価なPowIRstage ICを贅沢に2倍使用し、各種機能を強化したハイエンドモデルとなっている。より極限に近いオーバークロックを目指す方は、そちらのモデルも視野に入れてほしい。