基調講演二人目の登壇は、アリババグループ会長兼CEOのジャック・マー氏。米国株式市場への上場へ向けて準備が進められている現在、これに関する発言はなく、マー氏自身のビジネスに対する考えなどを述べるにとどまった。

夢は「アリババを、3つの世紀を生きる会社に」

アリババがインターネット金融に乗り出した時、中国では金融をめぐる環境が整っていない状況だった。「チャンスは人の不満の中にある。それを解決すれば、自分のチャンスになる」とマー氏は言う。その上で、同社が大きく発展したのは、「ユーザーが強くなれば私たちが成長する」という哲学の下、「ユーザーが第一、社員が第二、株主は三番目」という姿勢を貫いたことによると述べた。

アリババグループ会長兼CEO ジャック・マー氏

これまでのITが、ビッグデータを扱う「DT(データテクノロジー)」に変わりつつある現在。マー氏はこれを技術の変化ではなく思想の変化だと指摘する。DTとは、即ち技術をもって利用者を理解すること。それは他人をハッピーにするものであり、その時には私たち自身もハッピーになれる、と技術をもって哲学を実行する合理性を示した。

マー氏 「世界の変化は人の想像力によって作られるもの。チャンスがあるかどうかは思考にかかっている。ビジネスの相手はライバルでなくお客様だ」

経済が常に良いということはなく、アップもあればダウンもあり、それが経済の魅力でもある。アップの時はアップのことを行い、ダウンの時はダウンのことを行う。そうして時代の波を乗り越えてきたマー氏は、現在の夢を「この会社を102年間生かすこと」だと述べた。1999年に誕生した同社は、102年間で3つの世紀を生きることになる。この先87年間という具体的な時間。それを目標にすれば、今なにをすればいいのかが自ずと明らかになると述べた。

マー氏 「技術の変化が早いことを心配する必要はない。本当に世界を変えるのは技術ではなく、人の不満を解消し、お客様を支援していくこと。その夢に、努力していくことだ」

ビッグデータの恩恵をあらゆる人へ

基調講演の最後に登壇したのは、ヤフー 代表取締役 宮坂学氏。同社の売り上げの約6割を占める広告ビジネスについて、今後の方向性を「アート」と「テクノロジー」の視点から語った。現在確認できる世界最古の広告は、トルコの約2000年前の遺跡のもの。人に商品やサービスをどう伝えるのかは、人類が2000年以上に渡って追求し続けている課題といえる。同社はそれをビッグデータの活用により解決しようとしている。

ヤフー 代表取締役 宮坂学氏

広告における「アート」とは、テキスト・写真・動画といった表現手法のことで、この進化はネットの進化そのもの。広告も映像化が進んでおり、ユーザもそれを受け入れつつある現在、宮坂氏は「ビデオによるブランディングは大きな可能性を秘めている」と考えている。さらに今後は、3Dプリンタとの連動で製品のモデルを手にとって見られるといったことも起こりえるという。

インターネット広告の要素「アート」と「テクノロジー」

一方の「テクノロジー」の進化は、適切なタイミングで適切な人に届ける「ターゲティング」の進化に見ることができる。かつてはクルマの広告はクルマの記事に出すというように、コンテンツによるセグメントを行っていたが、現在は閲覧中の内容に関わらずクルマに興味がある人が見た記事にクルマの広告が配信されるという、人によるターゲティングが行われている。この精度を高めているのがビッグデータである。

ビッグデータのポイントは3つの「V」

宮坂氏 「Yahoo! JAPANのPVは1日あたり570億。これは570億のクリックやタップで示される意思決定がサーバに蓄積されているということ。ここに人が何を考えているか、何をしようとしているかの手がかりがある」

こうしたテクノロジーは誰もが使えるものであり、使いこなせば企業規模に関わらず大きな成果を生むものであると、宮坂氏は事例を示した。

数多くの小さな企業や個人商店がインターネット広告で成果を上げている

ネットの未来へ向かうベクトルはビッグデータがその中心であるという宮坂氏。「その恩恵を分け隔てなく、あらゆる人が使えるよう民主化していきたい」と述べ、講演を締めくくった。