"1984"から30年、かつての敵は今日の友
今回の提携は自然な流れという印象を受ける一方で、別の意味で大きな話題になっている。それは、いまでも伝説となっている「1984」のSuper Bowlのコーマシャル映像において、かつてAppleが打倒すべき相手であるとした「Big Brother」のモチーフが、当時IBM PCでコンピュータの世界を席巻していた「Big Blue」こと「IBM」だといわれているからだ。
あれからちょうど30年、かつての倒すべき最大の敵を最良のパートナーとして迎えるAppleという構図が少年マンガのクライマックスのような展開を彷彿とさせ、「事実は小説よりも奇なり」という点で面白い。
Wall Street Journalが同件を受けてApple CEOのTim Cook氏とIBM CEOのVirginia Rometty氏にインタビューしたところ(http://online.wsj.com/articles/apple-ibm-in-deal-to-create-apps-sell-phones-1405456933)、「われわれは1984年にライバル同士だったが、2014年現在これ以上の補完関係にある会社を見つけることはできないだろう」というコメントを残している。
提携はまだ始まった段階だというが、IBMでは今回の業務提携で10万人以上の従業員がAppleに関わることになるということで、その規模の大きさを測れるだろう。先進国でのスマートフォン市場の成長が一段落つきつつあると指摘される昨今だが、未開拓のフロンティアとして有望市場の1つとみられるエンタープライズ分野での船出は、岐路に立つAppleの今後数年の行方を占う重要な指標になるだろう。