ASIMOの次に採用されたロボット科学コミュニケーター「オトナロイド」

そして「アンドロイド - 人間って、なんだ?」の展示位置だが、未来館3Fの「未来をつくる」エリアの中だ。同エリア入り口から左手、未来館のシンボル的存在である球体ディスプレイ「Geo-Cosmos」の方に向かうと、すぐにオトナロイドとテレノイドが待っているエリアとなる(画像14)。詳しくは後述するが、コドモロイドは反対側、入り口を入って右手になる。

画像14。オトナロイドはソファに座って来館者を迎えてくれる

さて、まずはオトナロイドから説明しよう。オトナロイドは成人女性の見た目をした遠隔操作型アンドロイドで、実はASIMOの次に未来館に採用された、ロボットの科学コミュニケーターだ(画像15)。内覧会で宇宙飛行士でもある未来館の毛利衛館長に辞令を渡されて正式採用となり(画像16)、実は名刺もある(画像17)。

画像15(左):3代目ASIMOの胸にも未来館のロゴが入った。画像16(中):辞令の様子。彼女は自立できないので、座って辞令を受けるとは何事だと思わないように。画像17(右):オトナロイドの名刺。筆者をはじめ、この日取材したプレスはみんなに配られた

彼女には3つのモードがあり、さまざまな形で来館者にアピールしたり、考えさせたり、楽しませたりする。目玉となるのが、オトナロイドを操作できる「自由体験モード」だろう。オトナロイドが座っているソファの隣に操作ブース(画像18)があるので、そこでマイク付きヘッドフォンを装着すると、それだけでオトナロイドの首を動かせるようになる。目の前のモニターにはオトナロイドのカメラがとらえた1人称視点のものと、別のカメラがとらえた俯瞰映像の2種類が映し出される形だ。

オトナロイドが座るソファの横には別のソファがあって来館者が座れるようになっており、操縦者が話をすると、そのままオトナロイドが話したような形で、その座っている人に話しかけられるようになっている。もちろん、その様子はモニターで見られるし、相手が話したことも聞き取れるので、対話を行える。また、タッチパネルに「うれしい」「かなしい」などが用意されており、オトナロイドの表情を変化させることが可能だ(画像19)。

画像18(左):オトナロイドの操作用ブース。画像19(右):オトナロイドの操作タッチパネル

この自由体験モード以外には、「通常モード」と「科学コミュニケーターによるデモンストレーション・モード」がある。前者は、遠隔操作されていない時の状態で、ソファに座ったオトナロイドのまばたきや呼吸する様子、表情の微細な変化を来館者が見られる。後者は、毎日11時30分と14時30分の2回の予定で、実演時間約10分で行われる、人の科学コミュニケーターと共にオトナロイドがアンドロイドの解説を行うという内容だ。自由体験モードでは公開されていない表情や動きを披露しながら、ロボットと人間の違いについて来館者と一緒に考えていくという。

ちなみにオトナロイドの肌に関しては、ココロでアクトロイド-Fなどの表皮を手がけていたスタッフが創業したエーラボが担当しており、最高ブランド責任者の島谷直志氏に話を聞いたところ、今回はまた同じ女性型アンドロイドでも、アクトロイド-F(ジェミノイド-F)とは皮膚の見た感じを変えているそうである。アクトロイド-Fはロシア人とのクォーターの日本人女性がモデルとなっていたが、今回は日本人女性の方が務めているので(画像20)、肌の質感や色合い透明感などを変えているという。オトナロイドのメイキングの様子は、動画3を参照されたい。

画像20。オトナロイドのモデルの方。見比べてしまうと、どうしてもオトナロイドはまだ表情が硬い感じか
動画3。内覧会で流された映像の内、メイキング部分を抜粋したもの。モデルさんがどれだけ大変かがわかる

なお、内覧会では石黒氏自身や毛利館長がオトナロイドやコドモロイドと話をする場面も。石黒氏に調子はがどうか聞かれたところ、「ヒトでも雇用が厳しいので、辞令をもらうまでは緊張しています」という返事(まだ辞令をもらう少し前の段階)。その返事を返すまで微妙な間があり、目をすがめたりとかしていて、結構深刻そうだった(笑)。ちなみに毛利衛館長のアシスト的に説明によると、科学コミュニケーターは今人気職業なのだが、最高点で入ったのだという(どう最高点なのかまではわからなかったが)。毛利館長は、「これからすごく人気者になると思うので、期待してます」とした。

未来館でのオトナロイドの位置付けをもう少し解説すると、科学コミュニケーターの48人目となる。毛利館長はもちろんぜひ人気者になってほしいということだが、人気のバロメーターとしてまず挙げたのが、「追っかけができること」だという。つまり、どれだけリピーターを増やせるか、がポイントというわけだ。実際、未来館の科学コミュニケーター48人の内、エースの1人であるイケメンの本田隆行氏(画像21)は筆者も追っかけを目撃した(もちろん女性)。

画像21。エースの本田氏。この日は、テレノイドとともに、国内大手の某インターネット動画サイトに出演していた

毛利館長自身も「48人いるので競争はなかなか厳しい」と、ここも競争社会なのかと驚かす(未来館サイエンスコミュニケーターを略して「MSC」というらしく、48人いるから「MSC48」?)。さらに未来館には、同館のロボット科学コミュニケーターの大先輩であり、ロボット界のスーパースター・ASIMOもいるわけで、なかなか大変そうである。

しかし、きっと大丈夫。この完成度なら、ファンもできるに違いない。今、日本で有名な女性型ロボットもしくはアンドロイドといえば、前述のアクトロイド-Fか、産業技術総合研究所の「HRP-4C 未夢」(画像22・23)なので(そのほかにも女性型はあるが、若干古くなってきていたり、あまり一般的でなかったりするため、この2体が完成度と知名度から照らし合わせると双璧という意見が多いはず)、そこに3体目としてぜひ指折りで数えられるような存在になってほしいところである。

画像22(左):HRP-4C 未夢。こちらは2010年の第4回ロボット大賞受賞時のものなので、その後、一部改良されている。画像23(右):未夢の顔のアップ。起動前の目を伏した状態なのがたまらなく美しい(笑)、筆者イチオシのショットである。未夢の肌をきれいに写すのはとても難しく、プロかそれに準じる腕前が必要なのだが、この時はたまたま結構うまく写せた

ちなみに毛利館長は、「オトナロイドならではの期待すること」として、世の中、コミュニケーションを苦手とする子供たちもいることから、そういう子たちが「オトナロイドとなら話ができる」となってくれたら、素晴らしいことだとした。ぜひ、がんばってほしい。