将棋のすばらしさを伝える棋士に

――島九段の経歴についても聞かせてください。そもそも島九段が将棋を始められたきっかけは何だったのでしょう。

実家は将棋とは縁がありませんでした。僕はクラシックギターを習っていまして、小学生のときにたまたまギターの先生が教室の帰りに将棋道場に連れて行ってくれたんですね。ルールくらいは知っていたんですが、やってみたら勝てない。子ども心にもう一度来てみようと思いまして、そこから将棋を覚えていきました。自分で強くなるというよりも、ライバルや周りの刺激のおかげで強くなれた感じですね。

――そこから17歳でプロ棋士になられ、24歳のときには伝説の「島研」を始められましたよね。島研には森内俊之竜王や羽生善治名人、佐藤康光九段といったそうそうたる顔ぶれが参加されていました。

下の世代に彼らが出てきてね、ある意味、棋士を諦めさせられたというか……(笑)。

――棋士を諦めさせられた!?

羽生さんも森内さんも佐藤さんも、あとは最近だと中村太地くんもそうなんですが、10代の頃からみんな立派すぎて人間的にも完成されていて、こんな人たちがいるのかと(笑)。中村太地くんなんて26歳だけど、自分のことを若手なんて思ってないと思いますよ。将棋棋士って子どもの頃からずっとやっているので、一般的には社会人3年目くらいでも、将棋界ではかなりのキャリアですからね。もちろん私も現役のプロ棋士なので勝ちにはこだわっていきたいですけど、それだけが役割ではないと思っています。

――将棋のすばらしさを伝える役割を果たされたい、と。

将棋以外の世界の方に会ったとき、将棋の良さやトップ棋士のすばらしさをちゃんと伝えられる棋士でありたいのです。自分が棋士になったときは竜王戦ができたりして、右肩上がりの時代でした。それを新たな世代に残していきたいですね。J:COMさんもそうですが、最近はさまざまな新規企業や、これまで縁のなかった世界の皆さんと付き合うことが増えてきました。「ポケモン竜王戦」などもそうですが、そうした他の世界との融合を手伝っていくのも、自分のやりたかった仕事なのかなと思いますね。

――最後に、「J:COM杯3月のライオン 子ども将棋大会」に参加されるお子さんや、保護者の方、そしてまだ参加を迷っている方へメッセージをお願いします。

大会ともなれば、知らない人も多くて、踏み込むのが怖かったりハードルが高かったりするかもしれません。ですが、将棋を通して、自分たちの中にある別の世界を探すことはすばらしい体験です。勝ったときのワクワク感や、負けたときの悔しさを感じて、それを身近な関係に生かしてほしいですね。勝つことも負けることも大事。一番もったいないのは、参加しないことですよ。

――ありがとうございました。


プロ棋士として最前線で戦いながら、将棋のすばらしさを全国の子どもたちに伝えて回っている島九段。その言葉からは、将棋のすばらしさがしっかりと伝わってきた。そんな島九段が審判長も務める「J:COM杯3月のライオン 子ども将棋大会」に参加して、大会でしか味わえない濃密な一日を体験してみてはいかがだろうか。

■J:COM杯3月のライオン 子ども将棋大会
7月20日(日)仙台会場 仙台市情報・産業プラザ(宮城県仙台市)
7月27日(日)札幌会場 札幌コンベンションセンター(北海道札幌市)
8月 2日(土)大阪会場 大阪国際会議場(大阪府大阪市)
8月 3日(日)神奈川会場 横浜ワールドポーターズ(神奈川県横浜市)
8月 9日(土)福岡会場 福岡国際会議場(福岡県福岡市)
8月10日(日)千葉会場 TKPガーデンシティ千葉(千葉県千葉市)
8月17日(日)東京会場 東京都立産業貿易センター浜松町館(東京都港区)
8月23日(土)全国大会 東京将棋会館(各会場、全国クラスの成績上位者を招待)