BCNは12日、「4Kはデジタル家電の救世主になれるのか」と題し、消費増税後の市場変化と夏のボーナス商戦の展望について、BCNランキングの分析結果を発表した。特に大型テレビの4K化が着実に進んでおり、「4Kテレビ市場は新たな局面を迎えている」と指摘する。
国内デジタル製品の総合的な販売実績を示す数値として、同社は「BCN指数」と呼ばれる数値を提供している。これはBCNが全国大手家電販売店等のPOSデータを日時で集め、商品カテゴリごとに集計する「BCNランキング」をもとに、デジタル家電やPC関連といった116品目の実売データから、全商品の平均販売単価と販売金額の前年同月比をまとめた数値だ。
2013年10月には、実に2年4カ月ぶりに(微増ながらも)前年実績を上回り、2014年3月には増税前の駆け込み効果で162.0%を記録。だが、翌4月には97.9%と再びマイナスに転じた。直近である2014年5月の数値も、97.0%とマイナスで推移しているが、マイナス幅は小さい。週次ではテレビ、タブレット、レコーダーなどが台数で前年超えするなど力強い動きを見せている。
販売金額は、多くのカテゴリで前年を超えた。メーカー各社が出荷台数を追わず、平均単価の向上に注力しているためだ。回復の兆しと考えられる好材料は多いものの、2カ月累計で見ると前年割れのカテゴリが目立つし、PCはまだボトムが見えないなど、不安材料もなくはない。BCNの道越一郎アナリストはこうした傾向を総合し、「まず、販売金額で増税の影響から脱しつつある」と分析した。
急速に立ち上がる4Kテレビ
商品カテゴリごとに見たとき、デジタル市場の牽引役となっているのが、4K対応の液晶テレビ(以下、4Kテレビ)だ。大型テレビの4K化が着実に進んでいる。2014年5月には、50V型以上の液晶テレビに占める4Kモデルの販売台数構成比が、初めて2割を超えた(20.2%)。金額構成比は36.5%にまで伸び、4割に迫る勢いだ。
4Kテレビ市場をメーカー別に見ると、台数シェアでソニーが4月の76.5%から5月は54.5%と大きく下げている。過半数を占めているので、依然として圧倒的なシェアと言えるのだが、2013年5月に92.1%の数値を出した頃から、ソニー自身が「このシェアの高さは異常」とコメントしていたこともあり、市場が正常な形に近づきつつあると言える。
5月に入ってソニーのシェアが急に下がった大きな理由は、他社の追撃だ。東芝やパナソニックからは、50V型や40V型といった比較的小型で(あくまで4Kテレビとしてはだが…)、価格を20万円台に抑えたモデルが出てきた。道越アナリストは「ユーザーの間では、小型では4Kの性能がちゃんと発揮されないと思われてきた。だが最近になって、50V型や40V型でも適正な視聴距離を取れば、4Kの美しさは堪能できるという認知が広まってきた」と述べる。
もっとも、「直近の夏のボーナス商戦では、4Kがテレビ市場を牽引する効果はまだまだ小さい」とする。CSデジタルにて、6月2日から4K試験放送「Channel 4K」が始まったが、放送時間が13時から19時までの6時間程度で、受信するためのチューナーやチューナー搭載レコーダーがまだ発売されていないなど、視聴環境が整っていない。道越アナリストはこうした背景を考えると「量販店の店頭で映し出される4K試験放送の映像を通じて、4Kの認知を広げていく段階であり、4Kテレビ市場の本番は年末商戦以降になるだろう」と見通す。
一方、海外に目を向けると、中国や韓国のメーカーが廉価な4Kテレビを次々とリリースして存在感を増しており、日本市場への上陸も時間の問題と見られる。これについて、道越アナリストは、「海外メーカーの製品は、2K映像を4K並の解像度に引き上げるアップコンバートの精度で日本勢に及ばず、まだまだ国内製品に大きなアドバンテージがある。当面は海外ブランドの激安4Kテレビが国内市場を席巻することはないだろう」とする。
4Kテレビ以外の液晶テレビ全体については、4月に販売台数がいったん落ち込み、5月には前年比で90.0%まで回復。5月の販売金額は前年比で105.0%と伸び、平均単価の上昇基調が続く。画面サイズ別で見ると、ボリュームゾーンである30V型台の価格が健全化してきているなどの好材料が重なり、増税インパクトから徐々に回復していると見通す。ちなみに、現在の液晶テレビは9割以上のモデルがUSB接続の外付けHDDに対応し、そこに録画が可能だ。このため外付けHDDも、5月は前年比で102.4%と販売が好調だったという。