それなら、自分がスマートフォンに変えて便利になったことを次々に繰り出してみよう。何か一つくらいはEさんの心に刺さるかもしれない。
たとえば、そう、電子書籍はどうだろう。Eさんは移動中に本を読んだりはするのだろうか。
「本は読みますね。電子書籍ですか……それはたしかにちょっと気になりますね。スマートフォンでもちゃんと読めるものなのですか?」
おっ、これは少し興味を示してもらえたようだ。もちろん電子書籍はスマートフォンでもしっかり読めるし、なんといっても購入後に場所をとらず保管しておけるのがいい。漫画だとタブレット程度のディスプレイサイズがほしいが、小説なら何も問題はない。実際に電子書籍アプリの画面をEさんに見てもらうと、「これは確かにいいですね」と心が動いたようだ。
「ただ私は古本屋での偶然の出会いが好きなんですよ。電子書籍の場合はすでに存在を知っている本を探して買うわけですよね。それだと自分の知の範囲で深堀りはできるのですが、たまたま目に止まった本を手にとってパラパラとめくり、面白そうだから買うみたいな楽しみ方がしにくいのかなと。情報を蓄積するのに物理的なスペースをとらないのは魅力的ですが、そもそも私は好きな本以外はどんどん捨ててしまうタイプなので、そこもそれほど問題には感じませんし」
偶然の出会いが得にくいという電子書籍の弱点を的確に突かれてしまってはどうしようもない。うーん、あとちょっとだったのだが……。
何かEさんを説得してスマートフォンを買わせるのが目的のインタビューみたいになってきたが、もうひと押ししてみよう。