過去にMicrosoftが飛躍するきっかけとなったのはIBM PCへのMS-DOSバンドルだったが、OEMへのソフトウェアライセンスからの売上が中心となる2000年前後のPCブームまでは、おそらく同社のコアビジネスはソフトウェアのパッケージ販売が大きな割合を占めていたと考えている。Windows 95の大ブーム以降、PCへのバンドル販売が一般的となり、「PCが売れれば台数分だけMicrosoftの収益となる」というビジネスモデルが確立されていった。
だが現在、同社はビジネスの軸をソフトウェア販売から「企業ユーザーへの直接的なソフトウェアライセンス(アクセスライセンス)」「SMBや一般ユーザーを対象としたサブスクリプション」といったビジネスモデルへと移行しつつある。これは、過去にも紹介したようにMicrosoftが従来型のパッケージソフトウェアに関する制限を徐々に厳しくし、ことあるごとにOffice 365 Home Premiumといったサブスクリプション契約へとユーザーを誘導しようとしていることからも明らかだ。
問題は、このタイミングでのソフトウェア一斉無償化が適切なのかという点と、Microsoftの業績に与える影響だ。シェアが獲得的できれば長期的にはプラスになると考えられるが、現在のライバルはソフトウェアの提供そのものでは収益を上げていないGoogleと、そもそもソフトウェアをオープンにはせずハードウェアで儲けているAppleといった企業だ。
一度ある程度シェアを獲得したとしてもソフトウェアのライセンス料金を引き上げることはできず、長期戦を覚悟する必要がある。それにも関わらず、無償化で正面切ってこれらライバルと対決することが、中短期的にMicrosoftに与えるインパクトはどの程度なのだろうか?